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< 白書要約 和文 > |
アフリカ政策市民白書2005 (第1号) -貧困と不平等を超えて-
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■□ 1.TCSF白書の背景と目的
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TICAD市民社会フォーラム(TCSF)は、「日本の対アフリカ政策がアフリカの人々にいっそう役立つものとなることを目指し、アフリカの草の根の声を日本に届ける」という目的のもとに、2004年6月に任意団体として設立された。TCSFでは、アフリカ政策市民白書発行のほか、アフリカ援助アラート通信の発行、アフリカでのパートナーシップ・セミナー開催、アフリカ開発・援助にかかわるアドボカシー活動や広報活動等を行っている。
本市民白書は、日本の対アフリカ政策について、アフリカ、アジア、そして日本の「市民の目」から評価を行うことを目指す。これは、日本の対アフリカ政策が、国際潮流を強く意識し、追随することから抜け出せず、日本の対アフリカ援助に対して、日本やアフリカの市民社会からのコンセンサスがないままに進められている現状打破に貢献するためである。TCSFでは、本白書を通じてメッセージを発信することによって、日本の対アフリカ政策の改善と、日本の政府開発援助(ODA)をはじめとするさまざまなリソースをより有効に使って、アフリカの普通の人々の生活を良くすることに役立てるものと期待する。
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| ■□ 2.TCSF白書第1号のテーマとアプローチ |
過去50年に亘るアフリカ開発と国際協力の経験から、国家間や国内における貧富の格差、機会提供や資源配分における不平等を考慮せずに政策を決定し、開発を進めても、貧困削減につなげることは困難である。TCSFでは、貧困と不平等がアフリカにとって重要かつ緊急の課題であると認識し、本白書第1号のテーマを「貧困と不平等を超えて」とした。貧困の定義について、アルマティア・センが主観的な効用や物質的な「財」による定義を超えた貧困概念を明らかにしたが、現状では、「1日1ドル未満」で生活せざるを得ない人々の割合を示す貧困者比率など、物質的貧困定義が政策決定の基礎とされることが多い。
本白書では、このような背景を踏まえて、「貧困と不平等を超えて」というテーマに取り組み、市民社会の視点からの評価の実現にチャレンジした。白書作成のプロセスでは、既存データの分析や勉強会での討議に加え、アフリカ民衆により近いところにいるアフリカNGOに「日本の対アフリカ政策に対する評価」を委託し、結果と提言を取り纏めた。
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■□ 3.日本の対アフリカ政策の実績
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日本のアフリカに対する国際貢献の焦点は開発援助であり、日本政府は1992年のODA大綱で、ODA増額とアフリカへのシェアを10%台に確保することを明らかにした。1993年10月には、日本政府の主導により、第1回アフリカ開発会議(TICAD)が開催された。TICADは、日本政府、国連、アフリカのためのグローバル連合(Global
Coalition for Africa:GCA)の共催により東京で開催され、48のアフリカ諸国、13援助国・機関、8国際機関、3共催国・機関の各代表およびオブザーバーなど約500人が出席した。
1993年にTICADプロセスを開始して以降、1998年のTICAD Ⅱ、2003年のTICAD Ⅲの開催を経て、MDGs達成をとおした貧困削減のための国際的取り組みに、日本政府はODAにより積極的協力を展開しつつある。2000年の九州・沖縄サミットでは、アフリカでの開発問題に国際的イニシアチブを発揮し、アフリカ諸国を初めてサミットに招待し、アフリカ問題をG8のアジェンダとすることに貢献した。
ただし、日本のアフリカに対する2国間ODA供与額は、必ずしもこうした貢献が反映されておらず、1995年には1,332百万ドルと2国間ODA全体の12.8%であったが、この年をピークに金額、割合ともに徐々に減少し、2003年には530百万ドル、8.8%となった。
貧困については、外務省のODA大綱、ODA中期政策、JBICの事業方針、JICAの開発課題への取り組みにおいて、「貧困削減」を重要課題として取り上げ、それぞれの戦略に沿って協力を行っている。一方、不平等(あるいは平等)については、援助政策やJICA、JBICの事業計画では触れられていない。平等・不平等への具体的な取り組みは、ジェンダー関連のプログラムやプロジェクトで対応されているが、国家間や国内での貧富の格差是正に関連する取り組みはほとんど行われていない。
日本の対アフリカ政策と日本の市民社会のかかわりを見ると、2004年時点で、100を超える日本のNGOがアフリカ支援のための活動を行っている。1990年代前半に、外務省に日本の開発協力NGOへの支援を目的として、民間援助支援室が設けられ、ODAにおける日本のNGO活用が模索され始めた。TICAD Ⅲへ向けて、外務省によりNGO国際シンポジウムなどが実施され、JICAやJBICでは、草の根技術協力、提案型プロジェクトなどをとおして、日本のODAとNGOとの連携が進められている。ただし、NGOをとおして提供されるODAの割合は全体の3%に満たない。
引き続き、外務省ではNGOとの定期協議会の開催、NGOへの支援に着手するなどNGOとの関係強化を進めているが、欧米諸国に比べると日本市民の外交政策における関与の度合いは低い。アフリカに関していえば、経済関係が希薄であるため財界からの要請やロビー活動があまり活発ではない。国会で対アフリカ援助のあり方が審議されたり、問題となることもほとんどなく、族議員も少なく、新聞やテレビなどマスメディアの関心も低い。またNGO等のロビー活動もさほど効果的に行われてこなかった。
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■□ 4.アフリカNGOによる日本の対アフリカ政策の評価
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本白書では、①日本のODAが評価対象となりうる程度に提供されていること、②市民の声をくみ上げ分析できるNGOがいること、③東と西で1カ国ずつ代表国として選ぶことを基準とし、東アフリカからはケニア、西アフリカからはセネガルをNGOによる評価対象国として選定した。セネガルのNGOとしてENDA
Graf、ケニアではActionAid International Kenyaに、それぞれ日本の援助政策に対する評価を委託した。
4-1 セネガルNGO(ENDA Graf)による日本の援助政策への評価
セネガルにおいて日本の援助は今日まで数多くの功績を残し、人々の生活向上に大きく貢献してきた。しかし、日本とセネガル間の2国間援助は依然として政府が主体であり、両国の市民社会の参加度合いは低い。その理由のひとつとして、日本ではいまだにNGOが政府による開発援助のパートナーとして見なされていないことが挙げられる。
セネガルにおける日本の援助には、これまでの約45年の間に大きな変化はなかった。日本の援助は今も日本の技術を導入することを主体として、ほとんど地元の技術を活用しようとはしない。加えて、近年セネガルでは地方分権化が進んでおり、数多くの分野(保健、教育、環境、青少年対策、スポーツ・レジャー、都市計画、土地整備、都市化と住まい、文化等)において、中央政府から地方への分権が実施されているが、日本の援助はこうした変化に十分に対応していない。日本の援助も、セネガルの地方分権化の流れに適合することによって、開発プロジェクトに参加するアクターを多様化し、現地ニーズをより効率的に反映させることができるのではないか。
これまでセネガルにおける日本の援助は技術的な解決に大きく偏り、社会や政治面から問題を解決しようとはしてこなかった。しかし、貧困とはただインフラや道具の不足から起こるものではない。社会や経済の機能不全から貧しい者を守れなくなる時に起こるものだ。日本は、ロビーイングなどをとおしてアフリカの対アジア輸出を促進し、アフリカに輸出される農産品への補助金を廃止することなどを支援すべきではないだろうか。
4-2 ケニアNGO(ActionAid International Kenya)による日本の援助政策への評価
日本は、対ケニアODAを安定的に増やしている唯一の援助供与機関である。1990年から1996年では、平均して対ケニアODAの17%が日本から拠出されており、日本がケニアにとって重要な援助供与機関であることが分かる。主要援助供与機関の多くが経済成長や貧困削減、2国間、多国間における政治、社会、経済的関係の促進のためにODAを拠出してきており、ここ15年ほどでは特にガバナンスの改善や改革への要求が高まってきている。
日本の対ケニアODAは、独立後すぐに、技術協力の一環として2人のケニア人研修生を日本へ受け入れたころから始まった。それ以降、多少の変化はあるものの、日本の対ケニアODAは、技術協力がその大部分(1997年には52%、2001年には62%)を占めている。
公共、民間、市民社会セクターからの25人(うち13人は市民社会セクター)に対する情報提供者へのインタビューを基に、ケニアにおいて、日本のODAの業績がどのように認識されているかを検討する。回答があった限りにおいて、彼らが認識している日本のODAの主な対象セクターとしては、教育、保健、農業および農村開発分野が挙げられた。回答者は、日本のODAによる成果として以下を認識していた。
・ 中等教育における教師の理数科スキルの向上
・ 公共セクターのスタッフのスキルおよび能力の向上
・ 主要インフラの供与
・ 科学技術分野の高等教育進学のための奨学金供与
・ 警察局や裁判所、特に家庭裁判所への支援
・ 東・中央アフリカ地域における建築技術訓練プログラムの設置
・ 協力隊の農村地域への派遣
・ ケニア医療研究所の設立
日本のODAの問題点として、彼らが指摘したものは以下のとおりである。
【市民社会セクター】
・ 日本のODAにおける直接的かつ活発な市民社会参加の欠如
・ ソンドゥ・ミリゥ水力発電事業における政治的意思の欠如と困難な関係
【公共セクター】
・ 事業に関する決断の多くは日本で行われ、その決定は柔軟ではないこと
・ 小規模事業の多くは技術協力に偏重していること
・ 直接財政支援に消極的であること
【日本人ODA関係者】
・ 日本人技術者招聘にかかる膨大な費用
・ 日本のODAを効果的に利用するための受入国側の準備不足
・ 訓練を受けた官僚の市民・民間セクターおよび海外への流出
・ 援助供与機関間の援助協調の不足・遅れ
・ ケニア政府の限定された開発予算、資源的コミットメント
本調査の結果から、日本のODA、ケニア政府、ケニア市民社会に対して以下を提言する。
・ ケニアのODA事業への市民社会の参加を促す明確なフレームワーク作り
・ 全ODA事業に関する資金関連情報の開示
・ ODAやほかの開発事業の計画作成、モニタリング、評価への市民社会やほかのアクターによる参加の拡充
・ 実質的な政策提言を行うための市民社会によるODA研究の強化
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| ■□ 5.結論と提言 |
5-1 結論
日本の対アフリカ政策は、「非アフリカ的動機」により決定されてきた。欧米追随型であり、「状況対応型・非理念的実利外交」と呼ばれる。近年、ODA大綱の見直しや援助機関の機構改革などを通じて、その取り組みに改善が見られるが、依然として、①援助様式が日本の基準に基づいたもので、相手国の実情にそぐわず、効率を低下させている例、②援助スキームが多数あり、その煩雑さにより援助プロセスの停滞を招いている例、③相手国のガバナンスを適切に評価しないために、ガバナンスの悪化を招いた例などが見られる。
日本の対アフリカ政策への評価から、以下の問題が浮かび上がってくる。
(1) 日本政府のアフリカ市民に対する認識は、アフリカのネガティブな側面を強調し、彼らのもつポテンシャルや希望についての考慮がなされていない。
(2) 貧困削減や人道主義でアフリカ援助の重要性を繰り返し述べているが、アフリカは重点外交政策に「その他の地域」として位置付けられ、二次的重要性を与えられたままである。
(3) 10年にわたりTICADプロセスを主導したことは評価されるものの、この事実がアフリカ地域やアフリカ市民、日本市民に十分知らされてきたとはいえない。
(4) 日本のNGOが参加できる援助形態は増えてきたものの、実施手続きの煩雑さなど、NGOにとって使いやすい援助形態とはなっていない。また、日本のNGOの現地での活動に活用可能なODA資金が、他のドナーに比して桁違いに少額である。
(5) 2003年のODA大綱の見直しには、ODA政策策定への国民参加を日本政府が積極的に推進している努力がうかがえるが、実際には、一般市民が政策決定に関与する機会はいまだ限られている。アフリカ市民の参加に至っては、ほとんど考慮されていない。
(6) 日本の援助実績を見ると、日本の対アフリカ援助は、相手国ニーズが高いところに資源配分がなされておらず、妥当性、公正度が低いといわざるを得ない。
(7) 日本の対アフリカ援助政策は、貧困と不平等改善に取り組むに当たって、対象層が不明確である。政府要人や行政官を対象として、政府機関の組織強化を行って、貧困層への間接的な効果を狙う事業が多く、アフリカ市民社会への働きかけが限られている。
アフリカの貧困削減や不平等削減には、今後、こうした問題の解決が急務である。このためには、日本政府や援助実施機関が、もっとアフリカ市民社会や日本の市民社会の声を聞き、双方の市民社会による監視や参加を国際協力の場に生かしていけるような仕組みを作り、その仕組みを活用する努力をしていくことが必要である。
5-2 提言
アフリカNGOによる評価をはじめとする本白書での評価を踏まえて、TCSFでは、日本の対アフリカ政策の改善へ向けて
以下を提言する。
(1) 日本政府は、「アフリカ民衆の人間的発展」を第1の政策目標とする政治意思を明確に示すことが必要である。
そのための戦略は以下のとおり。
・ 日本とアフリカの市民社会、民衆レベルでの交流を促進する。
・ 貧困削減のための資金配分を拡大する。
・ 援助側の制度、手続き、スケジュール優先の体制を改める。
・ 政府機関を支援する「間接的支援」より、貧困者への「直接的支援」を拡大する。
(2) 日本の対アフリカ支援を通して、アフリカ市民社会、民衆への包括的支援を強化すべきである。
そのための戦略は以下のとおり。
・ 社会経済開発のみならず、貿易、投資、債務も含めた総合的戦略を強化する。
・ 国際交渉における制度的能力の向上のために、アフリカへの技術支援を推進する。
・ ガバナンスと民主主義への支援を強化する。
(3) 日本の対アフリカ支援における政策決定と援助改革プロセスへの市民社会の参加を促進する。
そのための戦略は以下のとおり。
・ 援助側と被援助国側への民衆によるコンディショナリティの設定を実現する。
・ コンディショナリティを市民社会、民衆と協議する場の設定に努める。
・ 援助改革の決定権を最終受益者の市民がもてるように制度改革を支援する。
・ 援助の第一義的説明責任を、アフリカ市民社会、民衆に対して果たせる仕組みを作る。
(4) 日本の対アフリカ政策の決定と実施において、アフリカの市民社会を政府と並ぶ援助パートナーとする。
そのための戦略は以下のとおり。
・ 対アフリカ政策決定に、アフリカと日本の市民社会が参加する枠組みを設定する(国別協議制度と市民社会参加)。
・ アフリカと日本の市民社会への制度的能力支援を行う。
・ 日本のODAのより多くをアフリカと日本のNGO経由で活用する。
・ 援助事業の実施においてアフリカと日本のNGOの協力および連携を強化する。
(5) TICAD推進者として日本政府は「アフリカの貧困者のためのTICAD」を実現する。
そのための戦略は以下のとおり。
・ アフリカ市民社会および民衆の人間的発展に役立てるためのフォーラムとする。
・ 日本の対アフリカ政策の中期政策を討議する場とする。
・ 共催者のアフリカ化と市民化。国際機関、その他援助機関とともに、AU、NEPADを通じて、アフリカと日本の市民社会の参加と協力を強化する。
・ アフリカと日本の市民社会の南南協力支援を促進する。
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世界銀行は、テーマを「公正と開発(Equity and Development)」とした世界開発報告書を2005年9月に発行した。また、国連開発計画(United
Nations Development Programme:UNDP)も、2005年9月発行の人間開発報告書のテーマを「岐路に立つ国際協力:不平等な世界での援助、貿易、安全保障(International
Cooperation at a Crossroads: Aid, Trade and Security in an Unequal World)」とした。
[第1号ではケニアのAction AidおよびセネガルのENDA Grafに委託した。 |