■□ パートナーシップセミナー会合 資料


---  NGOをめぐる国際潮流  ---

2005年6月25日


 開発政策の担い手として、 NGOだけでなく、市民社会組織(以下 CSO)の重要度が 増している。英国のDepartment for International Development (国際開発省 以下DFID)が、1997年に発行した国際開発白書は、パートナーとして、国際NGOだけでなく、労働組合や地域に根ざした団体、信仰 ベースの団体などを含めたCSOを挙げている。さらに、2000年発行の開発白書では民間企業の協力が不可欠とし、DFIDは、専門性の高い大学などの研 究機関との連携も推進している。

 開発の担い手の多様化とともに、NGOは、広義のCSOの1 カテゴリーとして認識されている。これらの流れに影響を与えていると考えられるNGOの成長 と役割の変化、国際機関の開発戦略、グローバライゼーション、先進国の社会経済状況などに目を向け、今、何故CSOの重要性に着目されているかについて考 察してみることとする。



 90年代から、開発のオーナーシップは途上国にあるとし、北 (先進国)のNGOは開発事業の直接実施から、アドボカシーなどの政策ワークや開発教育の促 進など側面的支援へと役割を変化させてきた。70年代、大規模かつ資本集約的なインフラ・プロジェクトが推進されたが、90年代にはいり、先進ドナー国で の経済の停滞から、北の開発NGOの効果・効率性が、問われるようになり、開発事業の主体者は、途上国のCSO、住民であるとの認識が生まれている。つま り、役割の変化と、ほぼ同じ時期にCSOへの支援が強まっている。

 このような役割の変化には、先進国NGOの成熟も関係してい る。例えば、米国のNGOのネットワーク組織のパクトは、1960年代の終わりに、国内の小 規模NGOの自立支援を始めたが、1985年に、米国NGOが自立するまでに十分成長したとの認識から、その任を終える。途上国NGOへの直接支援スキー ム(組織開発グラント)は残ることとなる。現在、政府、国際機関においても、国際NGOは支援の対象ではなく、政策過程に参加するパートナーシップを組む 相手である。

 対等のパートナーシップを築くまでには、政府とNGO間の協 議、交流による信頼形成の過程があった。例えば、米国のAdvisory Committee on Voluntary Foreign Aid(民間援助に関する諮問委員会)のような諮問委員会による政府との粘り強い協議と対話である。それに加え、パクトなどのNGOのネットワーク組織に よるNGOセクターの成長への支援、双方での人材交流などが、相互信頼を育んでいったといえる。

 しかし、政府や国際機関と協力するNGOがある一方で、同時 に、政府資金に頼らないで活動し、政府の援助政策に賛同しないNGOも当然存在する。 米国NGOの連合体であるInter Actionのメンバーの35%は、政府資金をとらないで活動している。政府系資金を取らないNGOの規模は、政府系のNGOの財政規模が大きいのに比べ て、それの半分以下である。

 成長過程において、NGOは社会において色々な役割・能力を 持つように変遷を遂げている。まず、問題提起・アドヴォカシー能力である。90年代初頭、現 場のNGOが、地雷問題を「人道問題」としてクローズアップし、人々の意識向上に働きかけ、人権NGOの活躍を生み出す。国際NGOは、インターネットの 普及とともに、迅速な情報の開示と伝達で機動力を増し、国際社会への影響力を強めてきた。UN主催の各国際会議に参加するNGOの問題提起は、国際規範の 成立にも影響を与えるようになっている。例えば、アムネスティ・インターナショナルの反拷問世界キャンペーンから、拷問等禁止条約が1984年に成立して いる。

 影響力をもつようになった活動に対し、市民社会からの支援が 増している。市民のNGOやNPOに対する信頼度は高い。成熟した市民社会を持つ欧米諸国に おいては、寄付による国際協力支援が、近年増加傾向にある。英国においては、政府資金を上回り、米国では、1998年~2002年にかけて、寄付が急増 し、その前の5年間に比べ47%も増加した。

 このように、先進国の市民社会の国際協力への関心の高まり は、以前は薄かった米国でも見受けられる。90年代後半から、各種の人道危機が発生し、国際協 力へ目が向けられるようになり、また、学校での開発教育が、開発NGOの地位向上に寄与した。

 また、開発も、より民間からの資金で賄おうとするトレンドが みられる。これは、援助疲れや、先進国の厳しい財政状況から生まれているだけでなく、NGO やNPOなどの民間非営利セクターが、社会において、サービスの提供と、また、雇用創出を生み出せるほどに成長していることも挙げられる。約190万人分 の雇用を非営利セクターが創出しているカナダにおいては、社会において不可欠な存在と認識されている。

 その結果、次第に、営利と非営利部門の境が不明朗になり、競 合関係を生み出している。国際協力において政府と競合関係にある民間財団は、政府が支援しな いような分野、種類の国際協力NGOの活動を支援する傾向がある。さらに、開発分野への民間企業の参入も、DFIDだけでなく、UNDPやグローバル・コ ンパクトでも推進され、まさに、大学なども含めた様々な開発の担い手が出現し、マルチステークホルダーとなっている。

 競合関係が生まれる中で、市民の目は、NGOやNPOの効率 性や、効果にも厳しく向けられるようになる。北のNGOが実施してきた事業の効果・効率性が 問題とされ、NGOの運営にも、経営の視点が導入され、ビジネス化が進められる。その流れの象徴的なものとして、英国のチャリテイ法の改正があげられる。 NGOは、1990年代以降は、MBA(経営学修士)やMPA(行政学修士)などが多く流入し、経営の視点が持ち込まれ、ビジネス化していく。その結果、 それまで働いていた人の「文化」と「ビジネスライク」に進める人の間に齟齬が生じ、人員の交代が生じる。

 国際NGOが、その活動の中心をアドヴォカシーに移し、開発 の主体は、途上国のCSOであると認識し、南のNGOへの支援が強まるなかで、国際機関から の取り組みがみられる。1996年、国際連合は、UN憲章の改定により、国際NGOを要件からはずし、途上国の草の根レベルのNGOに活動の場を拡げた。 さらに、国際機関で顕著にみられるのが、カントリーオフィスへの権限委譲(現地化)である。本部に、NGO支援に関するデータなどが、ほとんど保管されて いないケースが多い。

 途上国の市民社会組織が力をつけてきている上で、この市民社 会組織の開発政策決定への関与を支援していく方向が、先進国、途上国双方において見ることが 出来る。DFIDは、「シビルソサエティとの協働(How to work with Civil Society)」案を作成し、国際NGO支援から、開発政策への市民社会組織の関与の促進へとシフトしている。この動きは、グローバライゼーションに よって、先進国に増えている途上国出身者にも、開発政策への関与の機会を与える。英国の大手NGOであるアクションエイドは、管理職レベルが、ほとんど、 南の国の出身者でしめられている。

 しかし、アドヴォカシー能力の活用は、資金提供者によって選 別されているところがある。例えば、NGOを事業実施パートナーとして、アドヴォカシー活動 や住民参加型活動を実施するユニセフは、NGOの申請資格の中に、価値観がユニセフと一致することを条件付けている。1993年に設置された世界銀行のイ ンスぺクション・パネル制度は、世界銀行、NGOと住民が、国家プロジェクトに対して意義申し立てができるシステムである。しかし、あくまでも、世界銀行 の定めた政策や手続きに審査対象が違反していないかどうかという点に関してであり、結果的に、世界銀行の理事国の権限を強化し、途上国の理事は、概して、 制度の弱体化を目指しているとフォックスカリフォルニア大学助教授は述べる。

 つまり、途上国の住民やNGOが、国際機関と政府の間に挟ま れる形となる。しかし、見方を変えれば、彼らは、政府や国際機関が即座に彼らの問題提起に対 応することで、結果良い評判を得る機会を提供しているとNGO研究者のアン・C・ハドック氏は述べる。

 つまり、国際機関との関係は、今まで北のNGOからの一方的 な受給者として弱い立場にあった南のNGOの立場を強化することになる。そして、地域集団と 密接な関係をもつことが、南のNGOに正当性を与え、そのことが、資金提供者にとっても、自分たちの支援が無駄にならないという利点を与えるという相互扶 助の関係が生まれる。

 さらに、こういった関係を支えるのは、広く認められた規範で ある。ミレニアム開発目標、貧困削減、権利ベースアプローチなど、広く認められた開発戦略 は、関係機関にコミットメントを求める正当な理由付けを与えるといえる。

    国際機関による途上国NGOへの働きかけは、北のNGOとのパワーバランスを生み出している。アン・C・ハドック氏は、開発を進める上で大切なことは、ゼ ロサムゲームではなく、相互依存関係を構築することであるとしている。それによって、途上国のCSOに声を与える事が重要視されているといえる。モノ・ サービスを与えるよりも、発言する能力を与えるcapacity buildingが求められているといえる。

       しかし、現実には、政策研究大学院の笹岡教授は、政府資金が地方まで地方分権化のスキームにのっかって流れても、容易には貧困層に到達せず、腐敗を含め て、中央政府と地方のエリートとの結託した資源
の使われ方も現実には存在しうる、と指摘している。確かに、世 界銀行でも、中央政府によって、事業承認までの時間が大幅にかかる事が報告されているが、同 時に、それにもかかわらず、よい結果が生まれている
ケースもあり、さらに分析していく必要があるであろう。

 グラスルーツには様々な声があり、等しく聞き分け、本当に必 要な事は何かを摑めるよう私たち自身のcapacity buildingも求められているのかもしれない。


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