日 時:2004年11月7日
司会:間瀬さんにお願いしたのは草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下草の根無償と略)について。2001年から2003年にかけて在セネガル日本大使館で無償資金協力の担当をされた。現地での体験、成功例・失敗例などをお話いただき質疑応答の時間をとる。 【講演記録】 間瀬氏:本日はこのような機会を有難うございます。外務省が所感している草の根無償について、自分自身のアフリカでの実務経験とともに、現在日本で同じく無償資金協力に携わっている経験も踏まえつつお話しさせて頂ければ幸いである。簡単に自己紹介をさせていただくと、1998年に外務省に入省、その後フランスで二年間研修した後、セネガルで勤務、経済協力班に所属し、セネガルとその兼轄国、マリ、ギニアビサウを担当。現在は日本で無償資金協力に携わって、アフリカ全体の援助に関しても担当させていただいている。 まず草の根無償についてお話させていただく。配布した今年四月の資料をご覧頂きたい。草の根無償は、無償資金協力の中でも新しい制度。無償資金協力そのものは1960年代にスタートしているが、草の根無償は1989年にスタートし、2003年にこの名称になっている。主に開発途上国の草の根レベルの地域住民に届き、地域住民に裨益する資金協力を実施する。その他の無償資金協力との違いを述べると、草の根無償は、対象が途上国の地方公共団体、ローカル・国際NGO、またその他地域の教育機関、保健機関となっている。従来は、日本のNGOも草の根無償の対象となっていたが、平成14年度より、日本のNGOのみを対象にする日本NGO支援無償が発足している。 草の根無償による支援の対象となる分野は、諸生活分野、給水、教育、保健医療等、基礎的な生活のニーズに対応する分野が中心となっている。それらに限定されるわけではないが、全体的な傾向からこの分野が多い。 供与金額は原則として1000万円が上限で、最大一億円となっている。金額が大きくなると必要な手続きが増えてくる。草の根自体の目的が、地域の住民に直接手が届く支援、地域、村、市などに直接届く支援ということなので、それに伴い、金額が比較的小規模な案件が中心となっている。 TCSFという枠組みの趣旨・目標は、いかにしてアフリカの民衆に直接的に支援をいきわたらせられるかということであると理解している。そのような問題意識に応え得る援助スキームの一つ、唯一とは言わないまでも重要なものの一つが、この草の根無償であると思う。アフリカにおける草の根の実績について申し上げたい。資料を見て頂ければ、ここ数年徐々に減っていることがおわかりかと思う。その要因としては、まず、草の根無償だけでなく日本の無償資金協力全体として見た場合、アフリカのシェアそのものが減少している(約26%→約20%)ということが挙げられる。とくに平成14年、15年という年は、日本のODA全体として、アフガニスタンやイラクなどに発生した大きな資金需要にどう対応するかという課題があった。もう一つには、日本としてはもちろんアフリカ外交は重視していて、その中で支援を実施しているが、現場の体制や、あるいは対象となる各団体のキャパシティの問題もあり、援助のニーズは膨大であるのに、そうしたニーズを量という意味でも質という意味でもなかなか網羅することが難しいということが挙げられる。ちなみに、アフリカとはサブ・サハラアフリカのことを指している。 実務における留意点:手続きとしては、配布資料に記載されている。別添2など。草の根無償では、現場の出先機関である在外公館における案件の審査が一番重要であるといっても過言ではない。 1)被供与団体の案件実施能力の見極め。見極めさえうまくいけば、案件は成功する可能盛大。だが、要請件数は膨大であり、そのなかから絞り込んでいく必要がある。最終的に実現する案件であること、実施する団体が本当にその能力があるのかということが重要である。 具体的には、被援助団体の財政状況、人員、実施体制、実績、事前の協議とサイト視察、要請書の内容、案件を担当する業者の実績と能力といった項目が重要である。どういう品目を供与するのか、本当に必要なものを盛り込んでいるのか。なぜこの金額が必要かどこまできちんと説明できるのかという点。また忘れられがちだが、案件を担当する業者の能力。ちゃんとした業者かどうか見極めも重要である。 こうした点は、まさに言うは易く行うは難しである。私の担当したマリという国を例に取ると、2002年の9月にコートジボワールで内乱が発生したため、アビジャンの港が使えなくなり、マリは内陸国で物資の流通の7割程度はアビジャンに依存していたことから、資材が非常に値上がりをしていた。ちょうど自分の担当していたときにそのような事件がおきた。このような状況で、これまでの見積もりや積算で本当に案件が実施できるのかどうかということを、被援助団体だけでなく資材の納入業者等と直接連絡をとって確認した。力がある業者・被援助団体であれば、他の流通ルートを探してものを調達することも出来る。誤解を恐れずに言えば、当方としては、慎重に慎重を重ねた上で判断はするが、最後は腹をくくるということになる。だからこそ、被援助団体の案件実施能力は本当に大事になってくる。 2)案件の現場において確認すべきこと視察において確認することは数多い。現場の行政当局、地域住民、現地で活動しているNGOなどと意見交換をしっかりする必要がある。また、土地の確保は、意外に馬鹿にならない問題である。というのも、土地の所有関係が複雑で、行政当局自体も土地所有の権利義務関係を処理できていない場合は少なくないからである。 3)案件の広報次に、案件の広報。日本の「顔の見える援助」は、大使館の担当官としてはやはり気になる点である。もちろん、この点については、賛否両論、多くの議論があるところではある。現地の立場からすると、地域住民の生活が豊かになるということが重要で、どこの国が支援したかというのは問題でないという意見もあるだろう。ただ、別の観点からみれば、日本のODAが日本国民の税金である以上、日本からの援助だということをしっかりと認識してもらうという必要もある。率直に言うと、後者の考えが政府には強い。ODA予算は縮小傾向にあるが、その中でも、ODAは日本からの援助ということで被援助国に認知されているから大事であるというのは非常に重要な論点である。 4)大使館による、こまめなモニタリング、フォローアップの実施きちんとその援助が役立ち、物が使われているかということをきちんと見るところまでが援助である。日本の大使館の数がそもそも限られていて、一つの大使館が複数の国を見ているので人員が限られている。セネガル大は全部で6つの国を15人で担当しているので、業務上の重荷は相当なものがある。 以上、現地の大使館、担当官がどのようなことを考えながら援助に携わっているのかについて、おおざっぱではあるが述べた。 次に、東京から見る対アフリカ援助について。私自身、セネガルから帰国し、現在は無償資金協力課に所属している。セネガルにいたときに見えた援助と、東京から見る援助は、見え方が違うというのが率直な感想である。昨年秋、わが国はTICADIIIでアフリカに対し今後5年間で10億ドルの無償資金協力を約束した。これは、今後アフリカ全体に対する支援のあり方を発表するという、プレッジであり、これは外務本省の役割の一つである。これに対し、現地で活動している大使館やNGOにとっては、こうしたプレッジが具体的にどういう案件に結びつくのか、というのがいちばんの関心事項である。両者の関係は矛盾ではなくて、役割分担という面がある。外務本省としては、アフリカと他の地域の間の優先順位付けをどうするかを考えなければならない。 セネガルにいたときに直接目に見えるのは、自分の担当しているセネガルやマリに対する支援だったが、日本の援助全体として見た場合には、ある意味当然のことだがアフリカだけでなく他の地域にも援助をしている。アフリカにいれば、村落などの貧しい状況を見て、これは支援をしなければ、という考えがわくのは至極当然である。ただ、日本国内では、何故アフリカに対する援助が必要なのかということが政府内部や国会、あるいは世論一般において必ずしも十分に理解されていないという面はあるかもしれない。 たとえば、イラクやアフガンなどについては、紛争後の国を支援していくという配慮がある。それとともにアフリカに対する支援が重要という考えももちろんある。だが、繰り返しになるが、アフリカが他の国に比べて何故大事なのかということが重要になってくる。よく言われるのが、国際機関の選挙があったときに日本が支持を取り付けるためにODAが大事だということ。これに対して、援助には人道的な観点もあり、アフリカが貧困に苦しんでいる以上、日本としてはやはり支援していくべきであるという意見もある。 個人的な意見としては、どちらかといえば後者なのではないかと思う。日本自身は大戦後支援を受けて復興を果たした国で、新幹線や高速道路のための借款を完済したのはつい最近だという事実をよく想起する必要がある。そうした国が、開発問題に取り組み、貧困で苦しむ人々に対して支援を差し伸べるのは大事なことだと思う。一つの共同体の中で、お互いに助け合って生きるということは、古き良き日本の現れではないかとも思う。このような話は、援助の全体にかかわる議論であり、草の根無償だけに関係するわけではないが、こうした議論も必要だと思う。 日本がアフリカ支援を推進していく上で重要なのは、日本国内でアフリカファンを増やしていくということだと思う。アフリカンフェスタはそうした意味で非常に重要な取り組みであると思う。最近であれば、国会議員の中でもアフリカに関して関心を持つ人が増え、日・AU友好議連が結成された。また、同議連は、この夏、アフリカ全土に議員団を派遣している。こうしたことは少し前までは想像も出来ないことだったと思う。いずれにせよ、日本国内でファンを増やし、ひいては支援を増やしていくということが大事。 今後の展望について。援助の質と量の向上。ODA予算全体はここ七年で三割減少しており、無償資金協力についても例外ではない。そのなかで、草の根無償について、平成13年には100億円、平成15年で150億円となっており、減らされる無償のなかで、草の根無償については増額している。とはいいつつ、全体の予算が減少しているという厳しい現実の中で、量を増やしていきたいという議論だけでは通用せず、援助の質を高める努力も必要である。草の根無償にかかわる人々は、現地の大使館の担当官、外務本省の担当官、案件の対象となる地域の住民等様々だが、こうした人たち一人一人の案件実施能力がじかに問われることとなる。外務省では、草の根無償の案件実施能力を高めるべく、ガイドラインを新たに策定し、各大使館に周知徹底している他、毎年、実務担当者会議を開くなど、情報交換を図りつつ、援助に携わる担当官のレベルアップに力を入れている。 提言というほどではないが、能力強化は官の側だけでなく民のほうでも必要になっている。日本のNGOの存在は今後ますます重要になろうが、しかしながらキャパシティビルディングが必要。TCSFのような場を通じて、アフリカにおける地域住民のニーズを吸い上げる方途を考える必要がある。たとえばアメリカを見てみると、いくつかの巨大なアメリカのNGOが政府から資金提供を受けて事業を実施している。 現地NGOとの関係については、アメリカはいきなり現地NGOに資金を出すというわけではなく、アメリカのNGOの下請けという形ではじめ、その後これは大丈夫だろうというNGOに対して、やっと直接資金を出すようになる。アメリカのやり方が絶対というわけではもちろんないが、日本の今後の援助のあり方、日本のNGOのあり方を考える上でひとつのヒントとはなるのではないか。日本のNGOがもっと積極的にアフリカの現場で活動してくれるようになれば、それはアフリカに所在する日本の大使館の人間にとっても大いに参考になる。私自身セネガルでも、マリでも、積極的にNGOと接触して現場の話をいろいろと聞かせてもらった。 あとは、全体的な話になるが、アフリカへの援助の意義について改めて考え、積極的に訴えていくことが重要である。日本は何故アフリカに援助するのか。外務省でもTICADプロセスを通じて重要性を訴えているが、官だけでは限界があり、民の役割が重要になる。対アフリカ支援についてしっかり理論武装していって、日本の国内世論に訴えていくことが、対アフリカ援助を続けていく上で重要な基盤になる。以上で、私の発表を終わらせていただく。 【質疑応答】 司会:ありがとうございました。質疑応答にはいる。 質問者1:色々な現地のご経験、東京の経験などから説明有難うございました。二点ある。ひとつは、資料の二ページ目四番目に対象分野というのがあるが、保健、教育などあるが、一番大事なのは食料ではないか。食料のことは何故入っていないか。農業は無償にしては少し大きすぎるのか、食料増産については小さなことでも何かあるのではないかと思う。欧米的なアフリカに対する考え方で、農業はプライベタイゼーション重視だからなのか。教育のほうが重要視されてきたので、その影響か。二番目は、2002年が日本のNGO支援無償というのが始まったというが、どういうものに対し、いくらぐらいのどのような支援がもらえるかということ。 間瀬氏:一つ目について。これは私の意見だが、草の根無償だけでなく無償資金協力全体でみた場合に、農業は民間に任せるものという発想があるかというと、特にそういうわけではないと思う。無償資金協力の中には、たとえば食料増産援助という枠組みもある。最近、いろいろな理由から予算が減額となってはいるが、引き続き重要な援助ツールのひとつであることに変わりはない。本当はニーズが多いので、見直すところは見直して質を高めていければと思う。草の根無償については、もっとも代表的なものは、いわゆるBHN分野、すなわち教育、水、医療などの案件ということになるが、そのほかの分野を排除しているわけではもちろんなく、実際に、草の根無償においては、アフリカの農業分野の案件もあり、優先度が低いわけではない。ただ、実際に現場からあがってくる案件の多くがBHN分野のものであるというだけのことである。 日本のNGOへの支援については、平成14年度から、日本NGO支援無償という枠組みが新たに出来た。制度の概要・考え方は、草の根無償と凡そ同じである。ただ、日本のNGOのキャパシティビルディングを支援するという考え方を反映して、人件費等、草の根無償と比べてカバーされ得る支援対象項目は広くなっているものと理解している。 質問者2:セネガル政府はNGOを大事にする政策をとっており、NGO担当の省もあると聞いている。NGOについて登録制度を採用し、怪しいと考えられるNGOを排除することもあると理解しているが、日本の大使館では、どのようにして、これが妥当なNGOであると判断するのか。セネガルなど、被援助国政府と協議をして、NGOの格付けみたいなこともしているのか。 間瀬氏:非常に難しい点。外務省は、NGOの格付けをする権限もないし、格付けをすることはない。ただ、実際問題としては、案件がきちんと実施されないと困るので、NGOに実施能力があるのかは判断する必要がある。現場に行って意見交換をし、また、申請書類もじっくり審査する。そうしたことを通じてNGOの案件実施能力を判断する。書類で決まる部分はかなりある。プラス現場に行ってきちんと見る。しかし、繰り返しになるが、NGOの格付けをすることはわれわれの仕事ではない。 質問者2:むこうの政府当局意見を求めてはいないのか。 間瀬氏:していない。 質問者2:変な担当者がいると、お金が流れたりする。きちんとしていかなければならない。 など、日本政府の援助関係者が集まってつくるODAタスクフォースがある。NGOも加わったものがODA大使館だと聞いている。それはアフリカではケニアだけとのことだが、今後、この仕組みをどのような形で拡げていくのか。 間瀬氏:相手国政府の意見をもとめることはしてない。 質問者2:顔の見える援助とよく言われるが、それは、日本の顔が向こうにみえるのか、向こうの顔が日本国内でよく見えるのか。日本のメディアに対して、日本のODA案件を見てくださいといってやるということではないか。一時期日本のODAはいろいろと疑惑を招くようなこともあったが、実はODAはちゃんとしたことに使われているということを、メディアを使って知らせる必要があるのではないか。 間瀬氏:顔の見える援助としては、もちろんその両方ある。いちばん良く使われるのは、現地で旗を立てたりなどして、顔を見えるようにする。逆に国内でのPRの重要性も大切。今年はODAが五十周年ということで、外務省としても広報活動を重要視していて、私自身、テレビの広報番組担当として、各種取材協力・アレンジに携わった。メディアの人たちと話すと、日本のODAでそういう良いことを実現しているという事実を知らなかった、もっと積極的にPRすべきなのではと何度も言われた。尤もな意見である。ただ、現実問題として、ODA広報のための予算は近年非常に厳しい状況にある。本来であれば、これだけきちっとやっているということを周知させることは大事で、アフリカだけでなく、援助をする目的・意義を説明しなければならないのは事実である。 質問者3:各国で大使館、JICAが集まってつくるODAタスクフォースがある。NGOも加わったものがODA大使館で、それはアフリカではケニアだけと聞くが、これはどのような形で広げていくか。 間瀬氏:理想としてはすべての国でやりたいということだと思うが、人員体制の問題もある。現在は。いくつかの大使館を選んでやっている。そこのところは、いっぺんに進むのがいいのだが、少しずつ。いろんな意味で、援助関係者の量と質が限られている中でやっていく必要がある。 質問者3: 一般とか草の根無償についてはどのような形でやっていくのか。モニタリングとして定期的に行くのか。率直、大変ではないか。JICAの草の根技協はJICA事務所のある国に限られ、アフリカでは使いづらい。大使館の草の根無償は、大使館がない国で、どのような形でやっているのか。モニタリングとして定期的に行くのか。率直、担当官だけでNGOとしては資金さえあれば人が出せるはず。既に、ケニアでは日本のNGOが受託している。これを改良すれば、いろんな可能性がある。拡大する意向はあるか。間瀬氏:かなり大変である。願わくは、外務省・大使館の人員体制がもっと充実してもらいたい。 質問者3:それをNGOに委託するという考えはないか。 間瀬氏:それは一つありうるとは思う。どこまで大使館がやるか、どこまでアウトソーシングするかという問題である。人員が限られているなかで、どうやってやるか。現地のコンサルを雇って案件の発掘からフォローアップまで補助的に関与させることで、体制の限界を補うということはやっている。それを重視していく。 質問者4:わたしもエチオピアでやってきた。日本NGOや大学関係者とかで、現地語ができるひとなどもいる。草の根無償のときに、現地語ができないと大きな障害。現実的なやりかたとして、モニタリングや、第一次スクリーニング、発掘の事前準備などについて、いまはコンサルタントとおっしゃったが、外部委託をして、外部委託ができるしっかりしたところをみつけ、政策的なところを大使館が見るという考えが、効果が上がりやすい。現在、京都大学のひとが二年くらいエチオピアでやっている。ただし彼は一人でやっていて、一人ではたりない。大使館の書記官がそういう仕組みをつくっていって、二、三人のチームでできるようにしてはどうか。 間瀬氏:おっしゃるとおり。外部委託については、ここ数年予算をとっている。今年度予算では約二億八千万円が計上されている。現在、その増要求をしているところ。 質問者4:エチオピアの経験で言うと、日本の民間NGOの経験が少ない。日本の場合はゼロに近い。政府だけがやるというのは困難。どのような人たちを活用するか。アメリカの場合、アフリカのNGOにやらせてみて、いいところに援助していく。逆に日本の場合、その芽が出つつある。それを考えていくのが政府として非常に有効。外務省の予算要求を、財務省が口すっぱくして言うのは重要、でも民間がこのようなことを言っていると言ってもいいのではないか。我々の活動などを利用していただき、言っていただいてもいいのではないか。 間瀬氏:有難うございます。今の状況は予算がない。限られた予算のなかでどうやるか。外務省の中で見た場合には、確かに、無償資金協力には大きな予算が割り当てられているが、しかしながら、実際の援助のニーズと比べれば、人も足りなければお金も足りないというのが実情であり、どうやっていくかというのが問題点。国内世論に対して訴えていくことは引き続き重要で、援助の必要性をどう訴えていくか、その理論武装をしっかりとしていくべき。こうした話は、外務省はもちろん一生懸命やっていくが、外務省だけがやっていると思われるとうまくいかないというところはあるかもしれない。いろんなところから、ODAは大事だという話が出ているという形になればそれが一番いいと思う。 質問者4:白書などもある。それを遣って、外務省がやっているODAの活性化に利用していただく 質問者5:大変興味深くうかがった。広報にお金をかけるのが駄目というのは理解できる。たとえば、市民の目から見ても評価できるODAがあるのであれば、市民としてアピールできる。ただ、評価をし、良い評価ができるという前提の上での話。どの程度、効果的に使われているのかという判断が必要。これは、研究者や市民などの第三者がやれるだろう。それを、外務省が取り入れていくとしたら、とてもいいことだし、それを大々的に宣伝することは良い。ただ、ODA改革が必要。現在、アフリカNGOに色んな側面についてアンケートをとっている。まだ十団体の回答しかないが、まとまり次第でお渡しする。今回モザンビーク、マラウィー、南アフリカか、ナイジェリア、タンザニアの9団体のアンケート回答で、日本の援助を知らないという団体が9団体中6団体あった。かなり知られていない。外部コンサルの話になるが、そのコンサルが誰なのかということが重要。アフリカのNGOがどうして日本の援助を知らないのかと訊いたときに、政府経由できくので話がこない、あるアンブレラ団体経由なので一部しか情報が来ない、と言っている。もっと具体的に知りたいという意見がある。草の根案件の発掘が重要。外部コンサルは、現地事情とともに、草の根の制度も知っているというのが大事。ちなみにこの草の根に関わる外部コンサルをNGOがやっていくということについて、一国あたりどれくらいの金額ができるか。案件発掘から情報提供からモニタリングを含めて、どれくらいのお金が出るのか、ということ。問題は、NGOにはこれができる人がいるが派遣するお金がない。民間の寄付金をそのようなことに使うのは難しい。役に立つからといっても、なかなか見えにくい。だったら政府からもらえということになる。そうなると人材派遣や現地事務所管理など、現実的に現地事情に詳しくとも、お金の問題になる。このような分野に新たに参入したい団体(NGO)があった場合どの程度か。 間瀬氏:今の制度だと、日本のODAは一般的に人件費に対して厳しい。日本NGOについては、先ほども少し触れたが、日本NGO支援無償という別立ての枠組みを設けており、そこでは若干人件費を見ている。日本のODAは、案件自体を実現するのに必要な資金について協力を行うというのが基本的な発想であり、それ以外の部分については、相手の自助努力にゆだねるという考えに立っている。ただし日本のNGOについては、日本のNGO自体のキャパシティビルディングも重要だという考えに立っている。日本NGO支援無償は、当省の民間援助支援室が主管している。 質問者5:外部コンサル的に、ビジネスとしてやった場合はどうか。日本のNGOに委託するという形。 質問者3:それについては、NGO-外務省定期協議会の場で何度が議論されてきている。NGOとコンサルタントは、対応するスキームが違って、まずNGOには外部コンサルとしてはできないという返答を外務省から受けている。 間瀬氏:NGOが、あるときには案件の要請・実施主体となり、あるときは他のNGOや地方公共団体が要請・実施する案件のモニタリングをする、というのは、予算の制度上ではなかなか説明がしにくい点なのかもしれない。 質問者5:アウトソージングというのはNGO以外ということか。 間瀬氏:現地のコンサルということが多い。 質問者5:管理費が出ないということは、プロジェクトをやればやるほどキャパシティが細っていってしまうということでもある。また、草の根の案件については、今年から東京中心の審査になったと聞いたが、実際はどうか 質問者4:表を見ると前より東京サイドのコントロールが強くなった感じを受ける。 間瀬氏:微妙なところ。現地からすると、東京の外務本省がいろいろうるさく言っていると感じるかもしれない。だが、ルールとしては変わっていないのではないか。どういうニーズがあって、どういう案件をやるべきなのかという判断は、東京だけではできない。そこは現地の大使館からの協力が重要である。ただ、草の根無償は一つの制度である以上、それに当てはめた場合に問題があるのかないのか、あるならどうすればいいのか、といったことを確認・判断するのは東京の仕事である。そこが、現地の大使館の人からすればうるさいということになるのかもしれないが。ただ、草の根無償については、失敗案件に対する目が最近とくに厳しくなっていることも十分踏まえるべきである。 申請を提出してから一年経って受理の知らせがあり、その間に人員を解雇してしまったなどの理由で案件が実施できなくなっているケースもある。 質問者3:これこそODAタスクフォースやODA大使館の定例ミーティングで進捗状況を報告すればよいのでは。 ちなみに、草の根無償については、今年はイラクがあるからこれはダメ、というような判断は特にしていない。 質問者4:減っているということは、もし、イラクやアフガンがないとすれば、本音で言えば、実施能力がアフリカでははるかに弱いから、そこが原因で書類だのその他で十分にできない、それを改善するためにはサポートする仕組みが必要。草の根無償自体は有効だが、実施能力の面でアフリカの大使館をサポートする必要がある。 間瀬氏:アフリカにおいて草の根無償のニーズは間違いなくあるし、現地の実施能力が高まればより多くの案件を実施することができるようになるというのはそのとおりである。草の根無償が現地のNGOによく知られていないという話については、こういう仕組みがあることをアピールするのはもちろん意味はあるとは思うが、ただどこまでするのかという問題はある。 質問者5:スピードが遅すぎる、ということが挙げられる。申請を提出してから一年などたっていて、実施できなくなっている。 間瀬氏:どこまで現実的かよくわからないし、また、こういったことを言うのも若干変かもしれないが、申請された案件についての審査状況を頻繁に大使館に問い合わせていただくという手もあるのかもしれない。 質問者3:定例のODAミーティングなどで打ち合わせをしていくべき。 間瀬氏:キャパシティビルディングという意味で、管理費、人件費について付言すると、こういった費用を自前でまかなえて案件を実施できるNGOに対して資金協力をするのが本来想定されているあり方ではあるが、日本のNGOについてはこうした費用についてもある程度支援対象に含めるという考え方に立っている。 質問者5:セネガルでのご経験で、キャパシティビルディングなど言われていて、率直にそれはどれくらいできると思われるか。他のドナーの調査は行なっているか? 間瀬氏:草の根無償については、数多くの要請案件の中から選んでやっていかなければならないが、その際、被供与団体については、やる気はあるけど身体がついてこないという団体よりも、やってくれといわんばかりにどんどんと案件をこなしていけるというNGOのほうがやりやすいという面も正直ある。というのも、お金を出せばNGOのキャパシティが直ちに向上するわけではなく、それは相当長期的な話になることが予想されるからである。 質問者5:他のドナーについてはどうか 間瀬氏:正直に申し上げてあまり詳しくは知らない。ただ、民間援助支援室が、他ドナーが自国のNGOとの関係に関する調査のようなことはひょっとするとやっているかもしれないが、よくわからない。 司会:時間過ぎたが、質問は。 質問者6:一昨日マダガスカルから帰ってきて、草の根無償については知られていないと実感した。失敗案件の基準についてだが、投入されたお金が使われているか使われていないかということなのか、それとも正確に使われているかという点が重視されているのか。 質問者3:時間がないので、USAIDやCIDAの話はカットして、お金が余っているという話をひとつ。昨年度から始まった「日本NGO支援無償」は消化しきれないお金が余っている。昨年度、余ったお金を国庫に返したが、今年も余りそうだ、という民間援助支援室長の説明を聞いた。NGOが応募してこないのが理由ということだが、使い勝手が良くないから応募する団体が少ないのが現状。このスキームを変えていったほうが良い。そのときに、NGOの意見をもっと反映させることが必要だ。ただ、運用レベルで頑張るのは限界が来ている。NGOの実状に合ったスキームという流れができていたが、日本NGO支援無償になって、その部分が後退してしまったということだ 間瀬氏:難しい質問。日本の役人の発想としては、予定通りに物事が進まなければ問題があるということになるのかもしれないが、他方、当省の中では、開発途上国の現状をよく踏まえて、すべてが予定されていたとおりに進むわけではないという考えもあるなど、ある程度理解はされている。しかしながら、すくなくとも外務省の外では評価が厳しくなっており、たとえば、ある案件のスケジュールなどについて、予定通りでないという事実だけをもって問題視されるということがある。我々としては、物事いつもうまくいくとは限らず、現実のなかでどう対処していくかが大事であると認識している。しかしながら、中には、現実離れした議論をして、効果が上がっている案件でさえも失敗案件だと決め付けようとする動きがあるなど、思うように援助が行かないこともあるということを外務省の外との関係で理解してもらうのは難しい。 質問者3:お金が余っている。日本NGO支援無償は余っている。今年から本格的に始まった。そのお金が余っていて、今年も国庫に戻す、余りそう。NGOが応募してこないのが理由。使い勝手が良くないから。これを変えていったほうが良い。金がないのは確かだが、そういう形でのお金は余っている事実。スキームを変えていくときに、NGOの意見をもっと反映させるのは重要。 間瀬氏:日本のNGOの側からすれば今の制度は使い勝手が悪いということは聞いたことがある。自分自身日本NGO支援無償の制度の細かいところについて詳しいわけではないが、日本のNGOだけでなく外務省の側にも言い分はある。ODAに対する批判が高まり、ODA改革を推進していく中で、細かい点についてもより厳格に対処すべきという方向になってきている。時には、NGOや現地住民の人々にとっては馬鹿馬鹿しい問題と映ることがあるかもしれないが、東京では必ずしもそうではないこともある。これは永遠の課題かもしれない。使い勝手云々の話はあるかもしれないが、隣で見ていて、自分の同僚だからと身びいきでいうわけではないが、民間援助支援室の人々は多くの制約がある中で精一杯がんばっていると思う。援助の側面として開発、外交とともに国内事情というのがある。民間援助支援室も同じであり、制約の中でどこまでできるか追求しているのではないか。 質問者3:運用レベルで頑張るのは限界。制度という形にするべきでは。 間瀬氏:スキームのあり方を考える上でNGOの意見を参考にすることは大事だと思う。 質問者3:NGO事業補助金のときはその流れができていたが、それが後退してしまったということ。 質問者7:最近大使館の会議に出席した。外務省の方が、紛争の原因は雇用がないのが原因だとはっきり言った。もうひとりタイの成功例でODAがうまい具合に使われて、道路沿いに工場が作られて地域の経済が改善したということがあったが、しかしそれは偶然だったということ。アクトの分野ごとでNGOの意見を出したが、各分野は相互関係にある。地域の活性化につながるような全体の流れを見るということが大事。アクターがパブリックだけでは成り立たない、NPO、プライベート、など色んなアクターにシフトしていくべき。そして資金人員も流れていく。全体の流れが、人間の安全保障をするというような考え。それは外務省にはあるか。 間瀬氏:外務省としてもそうした考えを大事にしようとしている。セネガルのワッド大統領はODAだけで発展した国はなく、民間資本が大事で、援助はそれの呼び水である、ということをいった。最近では、外務省も、一国の開発のためにはどのような支援を全体として行う必要があるのか、項目を並べて議論している。もっとも、外務省の中だけでは出来ることに限界はある。外務省が所管しているODAについてはいろいろと議論できても、それ以外の分野、たとえば民間との協力関係がどの程度考慮できているのかは、なかなか難しいところである。TICADプロセスの一環として、アジア・アフリカ貿易投資会議が先日開催されたが、実際には、民間とODAをどうリンクすればよいのかについての具体性が欠落しているとは思う。 では、どのように考えていくべきか。民間資本をアフリカに活用するというのは、よく語られることではあるが、今の段階ではなかなか難しいのではないかと思う。小官がセネガル在勤中に、アメリカがセネガルの首都郊外に工業団地を作るという話があって、民間セクターの大規模進出かという話もあったが、その後どうなったのか、話はあまり聞かない。なかなか民間が入っていくことは難しい。民間にも、失敗案件ということはある。ただ、アフリカ各国の投資環境が今後整備され、投資をすればその分然るべくリターンがあることに、民間セクターが確証を持てるようになれば、民間投資は増えるとは思う。もっとも、国によって落差はあるだろうが。 司会:時間超過しましたが、援助セミナー草の根人間安全保障無償勉強会はおわらせていただきます。 ありがとうございました。