勉強会 報告】
 
 ■□  第4回 勉強会   アフリカ農村と市民社会編

テーマ : アフリカにおける市民社会 
       ニジェール「みんなの学校プロジェクト」に見る住民参加型学校運営

講 師 : 原 雅裕 氏  「みんなの学校プロジェクト」 チーフアドバイザー

日 時 : 8月8日(火)18:30~20:30

場 所 : 東京外国語大学 本郷サテライト 3階 会議室


配布資料: ① http://project.jica.go.jp/niger/6331038E0/04/pdf/10.pdf
          (みんなの学校だより「プロジェクト解説」2,3,5ページ)
        ② http://www.jica.go.jp/jicapark/monthly/0605/pdf/06.pdf
          (JICA Monthly 2006年5月号30~33ページ)
 【勉強会の内容】
1、今日の勉強会と白書についての説明 (司会:下村)

2、参加者自己紹介

3、みんなの学校プロジェクトの発表

①活動地域とその特徴
・ニジェール国:国土の多くが砂漠で耕作が出来ない。人口増加率が非常に高く、農村部に人口が多い。
          UNDPの人間開発指数で最下位だった、開発が遅れている
・総就学率が世界で下から二番目。2015年までのEFA達成も困難とされている。就学率のみならず教育の質、教育の公平度全てを改善しなければならない

②ニジェール政府の教育開発10カ年計画
・2002年作成、2003年から実施。作成段階から支援している
・三本柱:就学機会の増大、教育の質の改善、教育システムの改善→地方分権化の促進
 →COGES政策へ

③COGES(学校運営委員会)政策
・中央から学校運営委員会に権限を移すという政策
・地域社会とのコストシェアリング、学校主導による教育効率の改善、住民参加による学校への信頼回復を目指す
・コミュニティの4名、教師側の2名でCOGESを形成し、ほとんどの分野に関与する
・COGESを作ることは決まっていたが、どのようなものにするかが決まっていなかった
 →指針を作るところから、プロジェクトがスタートした
・機能する条件
   ⅰ)民主的である(効果としては、組織の透明性が高まる、住民の意見を採り入れられる、やる気のある人がリーダーになれる)
   ⅱ)活動の方向性を持ち、自発的に活動していけること
   ⅲ)COGESを支援する恒常的なシステムが存在する

ⅰコミュニティの方がCOGES内での比重が大きい。ゆえにコミュニティ代表である保護者会代表の3名と母親会代表の1名を選挙で選ぶことが民主的な組織作りの基礎となる。さらにCOGES事務局内での民主的な役員の選出
  →住民参加の基盤
ⅱ学校活動計画の導入-住民総会を通じて問題把握、計画の承認、自己評価を行い、実施に当たっては住民からの資源を動員する→直接民主主義的でやる気を起こさせる
  →住民参加の枠組み・発現
ⅲCOGES担当地方行政官によるモニタリングシステムの強化。地方行政官がNGOの支援を受け、COGESのモニタリングと支援を行う。
  →住民参加の永続化
ⅰⅱⅲにより機能するCOGES、住民組織を作り上げたと言える

④COGES政策の成果・教訓
・これらの結果、コミュニティが活性化した事例も多いようである
・購買力平価で一校あたり602万円もの金額を動員することが出来た(注:実際に602万円集めたということではなく、日本であればそのくらいの価値に相当する現金および労働提供を得た、という意味)

・上からの啓発がなくても、もともとコミュニティに開発に対する様々なニーズが存在し、それを行うやる気も能力も存在する
・必要なことはそのニーズを引き出し、後押ししてあげることである
・国家の開発政策との整合性を持たせる必要がある(リソースが限られているため)

⑤プロジェクトの工夫
・低い識字率など現地事情に合わせた研修を行う、ロールプレイングなど→日数の短縮が可能になり、同じ予算でも大勢の人数に研修を行うことが可能となる
・短期成果が長期成果に結びつくようなプロジェクトを作成する


自由議論

Q.世界銀行が様々な国で同じような政策を行っていて、全てで上手くいっているわけではないのだが、ニジェールで成功した理由は何か?

A.世銀はニジェールでも地方分権化を推進している。これは教科書や補助金など、学校に届くまでに、「消失したり」、管理の問題でうまく使用されていなかったなどの問題が起こっている。この問題を解決するために、学校に直接教科書や補助金を配布し、学校レベルで管理させたいと考えている。
ニジェールでの成功の秘訣は、上からの改革ではなく、住民にあるニーズをもとにした改革を志向したことによっていると考えられている。

Q.伝統的な部族社会の中で、どのようにして民主的な選挙を行っていったのか。
A.選挙を組織するのが校長先生。事前に根回しも行い、住民総会でCOGESの説明をする。ロールプレイングで宗教指導者達への対応を学び、彼らには飾り的な役職になってもらう。彼らを無視しては成り立たないが、決して本質的なことではないようである。
難民や遊牧民に関しては選挙を通じて融和することもある。しかし全てが上手くいくわけではなく、ケースバイケースで対応する必要がある。

Q.国家政策で就学率を向上させることは難しいのではないだろうか?
A.確かに費やされる資金が減少すると、成果が消えてしまうこともあるようだ。

Q.校長の人事・配置はどのように行われているのか?
A.同一地域から任命するようにしているが、契約教員の存在などで質の低下が問題になっている。

Q.住民の自発性・オーナーシップを引き出すには?又そのプロセスは?
A.身近な人たちを選ぶということで、真剣になる。無記名投票を実施することが重要である。重要なポイントで住民総会開催を義務付ける事も重要であった。透明性を確保することで、成果が見えるようにもなり、組織作りも重要であると言える。
また、子どもの幸せを願わない両親がいないように、ニーズにさえ合致すれば引き出せる。

Q.ドナーの役割・力はどこにあるのか?住民支援か研修か?
A.プロセスの中に、それを進めていくことで住民のやる気を引き出すというロジックが存在したことが一つの要因として考えられる。実際に行っているのは地方行政官の研修のみである。地方行政官がCOGES連合の講師となれるような研修を行っていた。地方行政官は校長に研修を行い、またCOGESが選出されたら、彼らにも研修を行っていくという役割である

Q.このプロジェクトは、住民の能力強化を目的としていたのか?
A.地方行政官は一人一人、能力もやる気もばらばらで、住民は彼らを選ぶことができないので、今後COGES側の支援も行っていきたいと考えている。行政側と住民側の能力強化はペアであると考えている。

Q.JICAの研修を受けに来た地方行政官に手当てなどは支払われたのか?
A.講師として働くときには微々たるものではあるが、ドナーから手当てが支払われる。コモンバスケットから支出されることは難しい。地方行政官側の動機は住民の反応にあるようである。また、COGESメンバーは例外もあるだろうが選ばれたという名誉に動機があり、報酬は支払われていない。

Q.住民側に研修に参加すれば報酬がもらえる、つまり役割は無償ではなく有償なら果たすという意識・習慣はもともとあったのか?
A.このような意識を改革していくことがこのプロジェクトであったように思われる。研修の内容さえ良ければ、最初は反発があったとしてもやっていくことができる。

Q.COGESが広がるまでの期間はどれくらいかかったのか?
A.当初は8年で計画されていた。しかし、世銀が教科書を供与するコンディショナリティとしてCOGESを広げることをつけてきたので、急速に拡大させざるを得なくなった。その結果機能しないCOGESが多く現れてしまった。

Q.COGESが他の地域、他の分野にまで拡大していく可能性はあるのか?
A.他の国では、地方分権化のやり方が異なる。しかし、余地はある。教育へのニーズ、住民選挙を行えるといった共通のものが存在する。しかし、成果が出ないと説得は難しい。他の分野への拡大も可能性は十分あると思われる。住民から信頼感を得ることが重要。COGES連合単位では実施も視野に入れているが、直接ではなく間接民主主義へと変容してしまうことが課題として考えられる。

Q.ドナーや地方行政官など住民が変えられる、選択できるような仕組みが重要ではないだろうか?
A.ボトムアップのシステムができているわけではない。住民のニーズなどをくみ上げる、ボトムアップさせるための仕組みの構築が重要である。

Q.伝統的な社会の中で、どのように民主的な仕組みを導入して行ったのか?
A.住民総会で意見が反映されていくプロセスから、住民自身も学んでいったと思われるが、ここは詳しく研究する余地があると思われる。まだどの様に変わっていくのかつかみきれていない。

Q.教員の質に対してはどの様にアプローチしたのか?またドナーの存在の大きさは?
A.教員の更迭を行ったCOGESも存在する。COGESの数が増えるにつれ、ドナーと住民のつながりは希薄になってくる。

Q.購買力平価で600万もの大金をどの様にして集めたのか?
A.保護者が分担するというのもある。しかし、地域のお金持ちが出すところもあるし、労働力供給でまかなわれるところもある。住民の合意というところにこのプロジェクトの継続性の鍵があると思われる。

Q.ドナー間の不和は無かったのか?
A.様々な人に分かるように翻訳して伝えるということが重要であると考えられる。成果を出すことで納得してもらう。特別な啓発活動については恒常的にできるわけではなく、お金がついたら実行するというのが現状である。

Q.COGESがサスティナブルになるためにはどの様になればよいと考えられるか
A.権利の獲得を自主的にできる組織になっていくことだと思われる。

Q.教員養成についてはどの様に行われているのか?
A.教員のキャリアやインセンティブを持たせる給与システムの構築が必要だと考えられるが、養成については十分ではない。COGESは教員の勤務管理に関わる。しかし、親が教えられている内容が分からないために難しいところもある。

Q.何が原因で地方分権化を推進することができたのか?
A.旧宗主国であるフランスでも地方分権化は進められており、地方分権化の流れ自体は古くから存在する。形があるようでないものが地方分権化なので、実際の形を作って提示することがキャパシティビルディングにつながると思われる。


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