勉強会 開催報告 】
 
 ■□  第2回 勉強会 テーマ :  「アフリカ農村社会とNGO-エチオピアの事例から」

 
 講 師: 白鳥 清志 氏  JICA エチオピア農民支援体制強化計画 チーフアドバイザー
                   アフリカ理解プロジェクト 副代表 / TCSF理事

  日 時: 6月9日(金)18:30~20:30

  場 所: 早稲田大学アジア太平洋研究センター 710号室


 【勉強会の内容】
1 エチオピアのNGOについて
 エチオピアには約1000のNGOがあると聞いているが、その内NGOの統括組織であるCRDA(Christian Relief & Development Association)に登録されているNGOは210団体で、その6割が現地NGO、4割が国際NGOである。
白鳥氏が活動するEast Shewa地域では126のNGOプロジェクトが行なわれている。福祉、教育、保健衛生分野のプロジェクトが多い。

2 白鳥氏の関与しているFRGプロジェクトとは
 NGO、組合、流通業者、国際研究機関等と連携した活動を模索しており、NGOではCRS(Catholic Relief Services)、WVE(World Vision Ethiopia)、SHDI(Self Help Development International)、SG2000(笹川グローバル2000)などと連携して活動を行なってきた。これらのNGOのアプローチには、①導入技術の違い②コストシェアリング③参加方法④介入期間などの点で違いがある。
 今年の初めに、水資源の利用に関するワークショップをNGOと共に開催した。その結果、NGO間やNGOと他の機関の間の情報交換がなされていないことが浮き彫りとなった。

3 アフリカ理解プロジェクトについて
 アフリカへのネガティブなイメージをポジティブなものに変える試みを行なうことを目的に、アフリカ紹介の書籍出版やワークショップへの講師派遣などを中心に活動している。 
 エチオピアでは教育支援(ローカルNGOであるGTF(Gudina Tumsa Foundation) を通じた奨学金の提供)、中学校の建設への支援などを実施している。
  * アフリカ理解プロジェクトはTCSFの団体会員でもある。http://africa-rikai.net/ 参照。

4 NGOの課題と可能性について
 ◎ 課題
  ・ NGOが行政の肩代わりを行なっており、これが実質的には行政の弱体化を進めているのではないかという点。
  ・ ドナー側の意向が強く事業に反映される傾向があり、必ずしも住民の優先度を反映した活動を行なっていないと思われる点。
  ・ NGOは優良な就職先であるため(給料は公務員給与の2倍から3倍)、公務員の流出先となっている。また、NGOスタッフは一般的にエリート集団であり、その結果、住民との乖離があると思われる。

◎ 傾向
 ・ 宗教(キリスト教)関係のNGOは資金が豊富で、同じ地域に長期間とどまり地元定着する傾向にある。
 ・ NGO間での活動地域に関する棲み分けが行なわれている。

◎ 可能性
 ・ NGOは地方政治の影響を受けることが少なく、住民の側に立ったものの見方ができる可能性が高い。
 ・ 住民のニーズを知ることができる。
 ・ 多分野にわたる活動を柔軟に実施できる。

5 今後の展望
 ・ 行政機能の内、特に地域内の開発事業を調整する機能の強化が必要である。それにより、多様なNGOを有効に活用できる。
 ・ 開発の目的が、住民自らの暮らしの充実を実現する社会の創造にあるならば、NGOに加えて住民組織や伝統組織への着目が重要である。
 ・ アンブレラNGOであるCRDAへの支援が、政策面での改善において必要である。
 ・ アフリカの農村と日本の農村の間には類似した面があり、アフリカの農村開発を考察するに際して、日本の農村開発を参考にすることも有益であろう。


【質疑応答】

(1)26のプロジェクトのうち農業のプロジェクトが9しかないのはなぜか?
 →East Shewa地域は農村地帯なので、農業のニーズが高い。しかし、農業プロジェクトは経済活動として利益を生み出すものでなければならないために難しい面がある。一方で、福祉や教育は基本的な住民のニーズとして比較的着手しやすいからではないか。

(2)農業研究におけるNGOの位置づけは?
 →荒地に3年で林を作ったNGOがある。こうした良い成果を広めるためには、試行錯誤から生み出された技術やシステムの理論化と汎用化が必要で、この点において研究者は貢献できる。また、研究員は、良い結果を出している試みを分析して更なる改善を提案できる。

(3)アムハラとオロモの関係は?
 →エチオピアは連邦制を採用しており、教育は各州の自治に任せている。オロモのアムハラへの反感は強いが、農業研究やNGOの活動で大きな影響を受けているとは聞いていない。

(4)プロジェクトがNGO間で重複することはないか?
 →ある。住民側の混乱も見られる。しかし、一般的にはNGO間で棲み分けが行なわれている。

(5)水産系のプロジェクトはないのか?
 →エチオピアは内陸国であるが漁をする住民は存在する。しかし、JICAはプロジェクトを実施していない。漁民の組織化を進めたNGOがあるにはある。

(6)農村金融の実情は?
 →一般的に農民間の貸し借りや流通業者による投入資材の貸与などインフォーマルな制度が利用され、フォーマルな制度の利用は少ない。NGO支援による信用組合の設立も見られる。

(7)穀物銀行は存在するか?組合活動はどうか?
 →穀物銀行については知らない。エチオピアではかつての経験殻から組合に対するアレルギーが強かったが、現在は組合が活発化しつつある。ガーナには都市にある民間銀行と農民とを仲介するNGOがある。このような活動はもっと試みられるべきかもしれない。

(8)タンザニアのSIDO(Small Industries Development Organisation)のように、農民に技、術と知識を与えるシステムはないのか?
 →エチオピアでは同様の機関は見当たらない。性質は異なるが、農業農村開発省が進めている事業に、Farmer Training Centre(全国15,000ヶ所)がある。

(9)国際NGOと現地NGOの相違は?
 →現地NGOの実態はよく分からない。多くのローカルNGOも資金源は国際NGOに依拠するものが多い。

(10)エチオピアでNGOのプロジェクトが成功するためのコツは?
 →考えるべきことは、以下の2点である。
 すなわち、
  ①地方の行政(ワレダ)に話を通すこと
  ②住民と相談し、「自分たちが決めた」という意識を持たせながら事業を進めること

【NGOを巡る議論】

質疑応答を受けて以下の3点を軸とした議論が行なわれた。

1 行政の肩代わりをするNGOを支援する意義について (NGOのパフォーマンスは本当に高いか?)

・ NGOが、本来行政が行うべき事業を肩代わりすることで、行政の弱体化に貢献してしまっているのではないか?他方、アフリカでは行政組織は「産業」であり、富の分配を行なっていることから、公僕としての役割を果たしていない場合が多い。
・ 住民にとっては、NGOは政府以上に必要な存在である。しかし、パフォーマンスについて言えば、NGOだから必ずODA以上にうまく行くわけではない。NGOもODAと同じような課題を抱えている場合が多い。
・ 行政を強くしていく必要がある(例:教育には行政の関与が不可欠である)。NGOはそれぞれ活動できる分野に限界があるが、行政がNGO等のさまざまなリソースを調整して有効活用すべきである。
・ 地方分権化は民主主義と相俟って金科玉条のようになっているが、地方行政の能力が追いつかず、住民が取り残されているケースが多い。NGOには補完役としてとしての役割がある。
・ 代価が得られるセクターをターゲットとしていくことでNGOのパフォーマンスは強化されるのではないか?(バングラデシュの例より)

2 NGOのエリート化について

・ アフリカのNGOは、その大半は都市のエリートが組織したものであり、NGOは「外部者」に過ぎないのがアフリカの現状である。

3 市民社会と国家との対立構造について

・ 市民社会には宗教団体や農村組合、労働組合なども含まれ、NGOはその内のワンオブゼムにすぎない。
・ 農民は市民社会に含まれないかというと、「国家と対峙する市民社会」という文脈では含まれうるが、組織化された農民でないと市民社会に含まれるとは言いづらいであろう。
・ 農民や市民が国家と対峙する際に、使えるのが市民社会であり、そのためには組織化は不可欠となっている。
・ アフリカでは、「ガバナンス」や「政治的暴力」の問題は深刻である。権力をもった国家に、個人や1団体が異議を唱えることは非常に難しい。そのこともあり、市民社会の役割は大きいはずである。
・ したがって、NGOは媒体役として市民社会を支えていくことが重要ではないか?
・ NGOは市民社会の声を代弁しうるか、という問いは確かに重要である。勿論、1NGO団体が、すべての声を代弁しうるわけはない。エチオピアでは住民の声を完全に代表するNGOは存在しない。しかし、国家権力に対して声をあげるという意味では、NGOに期待されるところは大きい。他方、どのような背景のNGOが市民社会のどの部分の声を代弁しているのかを把握することは常に重要である。
・ 住民組織や農民組織の強化に対するNGOの役割を検討する必要がある。

以上

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