■□ 政策提言

2006年2月10日


 
『TICADアフリカ平和の定着会義』に向けての
                        TICAD市民社会フォーラムからのメッセージ

 

TICAD市民社会フォーラム代表 
大林 稔 


  問題の所在 

この会議が開催される瞬間にも、アフリカの各地で武力紛争が継続し、多くの人々が殺害され、苦悩を強いられている。世界全体では武力紛争の頻度が低下傾向にあるなか、アフリカでは依然として紛争が頻発し、最も深刻な被害が生じている。武力紛争を直接、間接の原因とする犠牲者数は、世界の諸地域の中でアフリカが圧倒的に多い。その多くが、民間人であり、アフリカ民衆である。武力紛争が貧困をはじめ、アフリカが抱える他の問題を悪化させ、その解決を困難にしている。これらの問題に直面し、対処を余儀なくされているのもまたアフリカ民衆である。


アフリカの人々と日本の市民の間をつなぐことを目指すTICAD市民社会フォーラムとして、
次のことを強く求める。
この度、アジスアベバで「アフリカにおける平和の定着」を話す前提として、まずは武力紛争に関与しているすべての主体に対し、直ちにその関与をやめるよう呼びかけたい。

 世界は紛争解決のために全力を尽くすべきである。
まずはこの点を確認したうえで、本会議に対しては次の点を問題にしたい。

すなわち、本会議における市民社会の位置づけが軽視されている点についてである。


「平和の定着」のための主体は政府だけか?


 本会議には、市民社会は「オブザーバー」としてしか参加資格を与えられなかった。しかし、「平和の定着」の主体は、政府や国際機関、ドナーだけなのか?

「平和の定着」には、多様な定義がありうるが、それを「紛争に戻らないための構造づくり」と定義するならば、この分野において市民社会の役割は大きいと考える。なぜなら、紛争主体は和平合意への調印によって紛争が終わるが、紛争によって多大な影響を受け、変容してしまった社会において「平和が定着」するには長年の地道な活動が不可欠であるからである。その活動を政府だけで出来るのか?

多くの研究者やこの分野で活躍する活動家がいうように、市民社会は国と地域の人々をつなぐアクターとして、紛争後の経済や社会の建て直しを、「補足的な」アクターではなく、「キー」アクターとして捉えるべきではなかろうか。

 アフリカ市民社会は重要でないのか?


 TICADIII(第3回アフリカ開発会議)の議長サマリーでは、「会議は、元戦闘員の武装解除、動員解除及び市民社会への復帰DDR)、難民・避難民支援、児童兵士の再統合、地雷除去や小型武器の管理等、平和の定着に向けた諸活動において、コミュニティーの再生や人間の安全保障の確保という観点を重視する包括的なアプローチの必要性に合意した」と発表されている。

日本政府も、200410月に発表された日本の対アフリカ協力政策において、「人間の安全保障、コミュニティー支援の推進:日本の主導で国連に設置された「人間の安全保障基金」を活用して、人々の保護と能力強化による人づくり・社会づくりを通じた国づくりを支援」と述べている。

以上で謳われている「社会経済の着実な再建」「元戦闘員の市民社会への復帰」「コミュニティーの再生や人間の安全保障の確保」「「人づくり」「社会づくり」を担っていくのは誰だろうか。アフリカの人々であり、アフリカ市民社会ではないのか。アフリカの「平和定着」においては、彼らこそが重要な当事者であり、主体であるはずである。しかし、本会議におけるアフリカ市民社会の位置づけは「オブザーバー」にすぎない。そして、広大なアフリカにあってごく僅かの団体が参加しているにすぎない。

 日本政府による市民社会の位置づけは?


 小泉首相が2002年に設置した国際平和協力懇談会は、「国連や国際人道救援機関等における人道救援支援活動に関する決定において、日本のNGOのプレゼンスが確保されるよう、政府とNGOとの対話と連携を一層推進する等、可能な方策を講じる」ことが決められている。しかし、3年以上経った現在でもこの約束は実現していない。本会議でも、NGOは対話の対等なパートナーとして扱われているであろうか?否。単なる「オブザーバー」にすぎない。

現在、世界のいずれの国際会議においても、市民社会は重要なパートナーとして共催者となり、正式な参加者となっている。しかし、過去において、そして現在も、日本が関与するTICAD会議では、市民社会は単なる「観察者」にすぎない。アフリカ開発の当事者であるはずのアフリカ市民社会もまた「観察者」の位置に留められている。これは何故であろうか?

日本政府の市民社会軽視の姿勢は、TICADだけでなく、日本の援助政策に顕著な特徴でもある。日本の市民社会経由の援助は、数値の取り方によっても若干変動はあるものの、援助総額の2%~4%にすぎない。OECD全体の平均が1415であることを考えるとこの数値の低さが分かる。

 TICAD市民社会フォーラムの主張


 TICAD市民社会フォーラムは、TICADにおける市民社会軽視を問題として、アフリカおよび日本の市民社会関係者によってTICADIIIの際に結成された。

この度、市民社会が重要な役割を果たす「平和の定着」を課題とするTICAD会議が開催されるにあたり、「オブザーバー」ではなく正式な参加者として、現場で活動する市民社会の声に耳を傾け、今回も含め今後議論に正式に参加させるべきであると主張する。

次に、今後のTICAD関連の会議が、単なる政府レベルの儀礼的外交の場ではなく、真にアフリカの平和と繁栄を実現するための主体間の対話の場であるのであれば、現場で活動する市民社会の率直な報告と対話への正式参加が不可欠である。市民社会の声は、政府関係者にとって耳障りなものに聞こえるかもしれない。しかし、現場での活動に基づいた批判的な意見は、より良い政策選択に不可欠である。アフリカでは、貧困削減プロセス等において、草の根活動の面からも政策提言の面からもの市民社会は既に重要な役割を果たしていることは言うまでもない。日本政府およびTICAD共催者は、活動支援に加え、TICAD会義を含む意思決定への市民社会参加を認めるべきである。

 アフリカおよび日本の市民社会からのメッセージ

 添付資料は、アフリカにおいて「平和の定着」分野で活躍する日本やアフリカのNGOのメッセージである。市民社会のごく一部の声であるが、現場での経験からつむぎ出されたメッセージに是非耳を傾けていただきたい。そして、次回は必ず市民社会が正式なパートナーとして認められることを強く求めたい。
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