連続講座「アフリカ学」 初級コース

実施報告


 開催日 : 2005年6月18日(土)〜19日(日) 2日間
 会 場  : 独立行政法人 国際協力機構(JICA)東京国際センター オリエンテーションルーム

 定 員  : 80名 (受付 先着順)
 受講料  : 2日間 1万3000円
 対 象  : アフリカに関心を寄せる大学生・大学院生・NGO関係者・社会人

 主 催  : TICAD市民社会フォーラム(TCSF)
 後 援  : 独立行政法人 国際協力機構(JICA)

■□ 背景と目的
 現在、日本においてアフリカへの関心がたかまっているにも関わらず、既存の教育機関で包括的な「アフリカ地域学」が教えられることは、教員の数や専門分野などの制限により、ほとんどなかった。一方で、アフリカに関心を持ち、きわめて高い専門性を持って取り組む人が増加しているものの、これらの人々の経験や知見は十分に共有されていないという問題がある。本講座は、このニーズに応えるために企画された。現代アフリカ諸国が抱える魅力と開発、貧困、紛争などの諸問題を、当フォーラムの会員を中心に多くの優れた専門家の方を講師にお招きし、多角的に紹介することで、国内のアフリカへの理解の促進に努めると同時に、アフリカに関して高い専門性を持ち、将来国際協力の分野で活躍できる人材を育成し、することを目指している。

この急速 に高まるニーズと現状のギャッに応えるために企画され たのが、TICAD市民社会フォーラム(TCSF)による「連続講座『アフリカ学』」で す。現代アフリカが抱える魅力と開発の諸問題を多角的に紹介することで、日本国内におけるアフリカ理解の 促進に努めると同時に、アフリカに関して高い専門 性を持つ人材を育成します。初級から上級までのレベルを設定することにより、無理なく専門性を高めることを可能とし、将来的に国際協力の分野で活躍しうる 人材の育成を目指しています。
 
■□ 連続講座「アフリカ学」の構成
連続講座「アフリカ学」は、初級、中級、上級の3コースに別れ、年度内にすべて開港される予定である。いずれのコースも週末を利用して開講し、平日の講座には参加できない方でも受講できように設定した。コース終了時には修了証書を授与、全コース受講者には、「アフリカ学研修者」の証明書を授与する予定である。

【 アフリカ学(初級コース)  入門編 講座概要   ―アフリカ学を拓く― 】

<1日目 >
アフリカ学 入門概論

現代アフリカの抱える課題を紹介するほか、現在に至る歴史的背景を紹介することで、関心を高める。また、アフリカについてまったく知らない者にとっても分かるように、写真や映像、文学など多角的な資料を活用することで関心を高める。

アフリカの人々 文化・生活・歴史 女性・ジェンダー
アフリカの普通の人々はどのような生活度しているのか、文化や生活、女性の暮らしなどを講師の個人的体験や歴史的背景などを紹介しながら、日本との比較を行う一方、アフリカの人々が直面する問題などを身近に感じるきっかけを提供する。

アフリカの農村開発
アフリカで展開される農村開発の現状を1970年代以降の農村開発アプローチを始めとする歴史的背景や理論を理解した上で、現場で開発コンサルタントがぶつかる問題や解決手法を学ぶ。


 アフリカ学の入門概論から始まったアフリカ学講座は、まずはTCSF代表である大林稔龍谷大学教授が、豊富なデータを使ってアフリカと国際関係の変遷についての概論を講義した。その後、参加型学習の授業形態を取り入れ、第一回目の講義とデータに基づいて、グループ・ディスカッションと発表が行われた。これにより、参加者全体の参加意欲と関心が引き出される一方、参加者同士が知り合うきっかけが提供された。

 午後は、アフリカの映画から見えてくるアフリカの文化を、(故)白石顕二フリーダ・ジャポン株式会社代表を講師に迎え、講師の豊富な知識や経験を、ビデオなど視聴覚器材を交えて紹介した。受講生は、映像によるアフリカ事情を学ぶことで、アフリカの人々の豊かな文化背景に対する理解を深めた。

 そしてジェンダー問題については、富永千津子宮城女子学院大学教授が、日本におけるジェンダーの問題と絡めた問題提起を行ったことで、これまでジェンダー問題について関心を持っていなかった受講者からも、「もっと勉強してみたい」などとの意見が聞かれるとともに、多くの質問や意見が出された。「伝統」「近代」といった枠組みの相対化、あるいはアフリカ諸問題にかかわる際に、ジェンダーの視角が重要であることが、受講生に強く印象づけられた。

 1日目最後のアフリカにおける農村開発問題のセッションでは、まず吉田昌夫日本福祉大学大学院教授が1970年代以降の農村開発理論の変遷と、それぞれの理論の問題点を紹介した。

 次に、開発コンサルタントとして現場で長年にわたって活動を続けてきた内野KEITA香美氏が、ロール・プレーイングを取り入れた、臨場感あふれるアフリカの農村の現場の紹介を行った。参加者との間で活発な質疑応答がなされ、受講生は農村参加型開発の重要性や難しさについて理解を深めるとともに、理論を実践の立場から理解することにつながった。

 懇親会「アフリカン・ナイト」

 第一日目の講義終了後、東京国際センターの別館において19時より懇親会を開催した。参加者は受講生の他、 TCSF会員や関係者、招待者を含め計63名であった。アフリカ料理を提供した他、講座の講師によるアフリカ諸国の音楽の紹介(マイベスト)や、各国の民族衣装のファッションショーなど、講義では提供できなかったアフリカの生活、文化の部分をより身近な形で堪能できる時間を提供することができた。
また、受講生は懇親会を通じて、講師や他の受講生や関係者などと交流を深め、アフリカへ関心を寄せる者同士のネットワークを構築した。

<2日目>
アフリカと武力紛争 その傾向と現状 市民・NGO の役割

アフリカでは脱植民地化時代以来、多くの武力紛争が勃発してきた。現在もスーダンのダール・フール地方を始めとして、各地で武力紛争が継続し、アフリカ大陸で発生する国連難民高等弁務官事務所 (UNHCR)の援助対象者数は2004年1月1日現在で、428万5100人にのぼる。そこで改めてアフリカの武力紛争はどのような特色があるのか、歴史的背景や現在の性格、援助の問題などを紹介し、受講生の理解を促進する。

アフリカと貧困理論と実態〜国際協力の動向〜
アフリカというと貧困や飢餓がいつも発生し、日本を含めた多くの「先進諸国」の支援の対象というイメージが一般的に流布している。しかしアフリカを語る際に多用される、「貧しい」という言葉は、何を意味し、それはアフリカの人々の生活の実態を言い表していると言えるのだろうか。このコースでは、アフリカの貧困について多角的に論じる一方、近年進む国際的な「貧困削減」の取り組みとその実態について明らかにする。

政府のアフリカ協力 援助・外交政策
これまで、日本のアフリカとの関係は十分に検討され、紹介されてこなかった。そこで日本とアフリカはどのような関係なのか、日本の援助主体関係者側の視点を含め紹介する。日本とアフリカが、それぞれどのような課題を抱えているのか検討することで、今後のアフリカ−日本の関係を展望する。また、将来国際協力分野に進みたい学生にとっても、有用な情報を提供し、今後の進路の参考としてもらう


 2日目午前は、紛争問題について、理論と現場(NGO)という異なる視角に基づく講義が行われた。舩田クラーセンさやか東京外国語大学講師による、アフリカの紛争問題に関する概要や、紛争後の再構築による社会の「再」構築の可能性への問いかけが行われた後に、小峯茂嗣アフリカ平和再建委員会事務局長(早稲田大学インストラクター)によって、ルワンダでの支援活動を例に実際の復興支援の現場から見た、社会の秩序回復の可能性を紹介した。

 午後は、貧困をテーマに、まず勝俣誠明治学院大学教授が「そもそもアフリカの人々は貧しいのか?」という根源的な問いを受講生に投げかけた。次に、笹岡雄一政策研究大学院大学教授が、先進国によるアフリカ諸国への貧困削減支援の現状を講義した。最後に、橘田正造国際協力銀行国際金融開発研究所所長が、国際機関を中心とする対アフリカ支援政策の推移と現状を講義した。貧困をテーマとするこの一連の講義は、非常にレベルの高いものであり、他の講義のように参加型で進められる形式はとらなかったものの、質問票の利用によって、活発な議論が展開された。

 また、最後の講座では、将来国際協力の分野で働くことを希望する多くの受講生や現在国際機関や支援機関、団体で働く受講生へ向けて、アフリカ協力を行う政府、独立行政法人 国際協力機構(JICA)、国際協力銀行(JBIC)、NGOなど、アフリカ支援の現状を多様なアクターの視点から紹介し、最終的に質疑応答を受け付ける形式を行った。日本政府の話は黒河内康元タンザニア大使が、JICAの活動紹介については鍋屋史朗 JICA東京業務グループ長が、 JBICについては田辺輝行国際協力銀行開発セクター部長が、NGOについてはTCSF代表である大林稔が担当し、それぞれの活動を紹介した後に意見を交換し合い、また会場から質問を募って討論を行った。最後に2日間連続で参加した受講者に、初級コースの修了書授与が実施された。


■□  参加者

 18日の出席者は78名、19日の出席者は79名となった。(*当日キャンセルが数件あり)

 主な参加者は、国際協力に関心を持つ大学生、大学院生、残りは、実務者、研究者、NGO職員、民間企業だった。また、当日の会場での即席アンケートでは、6割近い参加者が実際にアフリカへ訪問した経験を有しており、当初想定していたよりもすでにかなりの程度のアフリカに関する知識や経験を有していることがわかった。


 ■□ アンケート結果

 最終日に、受講者へ講座に対する意見をきく、自由記述形式によるアンケートを実施した。

 アンケート結果では、中級コースへの参加への希望や、様々な角度からアフリカを知る機会ができたとてもためになる授業であったという意見が寄せられた。

  ・非常に興味深い講義が多かった。
  ・またぜひ中級コースを受けたい。
  ・初心者でも分かりやすい内容であった。
  ・よく企画、運営されていた。
  ・充実した内容のカリキュラムであった。
  ・さまざまな立場(外務省、JICA, NGO)から意見を聞くことができ、とても参考になる。
  ・多方面(農村、ジェンダー、紛争など)からアフリカを見ることができてよかった。
  ・さまざま講師の意見をきくことができ、刺激的だった。

 また、その他改善点として以下の点も指摘された。

  ・50分の授業では短すぎる。
  ・専門用語など若干難しい授業もあった。
  ・もっと議論をしたい。
  ・NGOや国連の仕事について聞きたい。
  ・2日間で行うのではない、ミニ講座をしてほしい。
  ・地方でも開催して欲しい。
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