第37回:饒舌なウィンカー (タンザニア)
第37回:饒舌なウィンカー (タンザニア)
■タンザニアの首都ダルエスサラームからケニア国境近くの町モシまで、陸路を往復したことがある。
■四輪駆動のサファリはボディもがっちりしていて、なかなか快適な走りだ。車高が高いので、窓から広がる風景はすばらしい。援助で作られたという道路はほとんど人家もない荒野を貫くように伸びている。ほかに車もほとんど見当たらず、ドライバーは気持ちよさそうにびゅんびゅんとスピードを上げる。
車内にはリンガラ・ミュージックがガンガン流れる。
やがて前方にたくさんの人を乗せたトラックが見えてきた。ドライバーが追い越しにかかろうとして右のウィンカーを点滅させたら、前のトラックが左のウィンカーをすかさず点滅させた。するとドライバーは追い越すのをやめて、前のトラックの後ろにつく位置に戻ってしまった。
どうしたんだろう? 不思議に思っていると、対向車線の車が通り過ぎた。また、ドライバーが右のウィンカーを点滅させる。今度は前のトラックが右のウィンカーを点滅させた。それを確認すると、ドライバーはスーッと追い越し車線に入って前のトラックを追い越した。
こうした前の車とのウィンカーを使った交信は、その後、ドライバーが追い越しをするたびに繰り返された。残念ながらドライバーは英語を話さないので、事情が分からない。でも、追い越しをしたい車がウィンカーを点滅させると、前にいる車は前方の反対車線から車が来ているか、いないかをウィンカーの点滅で知らせているようなのだ。左を点滅させると「前方に車あり。まだ追い越さないほうがいいよ」、右を点滅させると「追い越しても大丈夫」ということらしいと解釈した私は、とっても感激してしまった。いいよね、こんなコミュニケーション。
あれから10年以上の月日が経ってしまったが、今でもタンザニアのドライバーたちは、ウィンカーを通した会話を続けているのだろうか。
** タンザニアでは、車は左側通行です。前の車のウィンカー点滅で、左が追い越し不可、右が追い越し可だったと記憶しているのですが、逆だったかもしれません。なにしろ、少しばかり昔のことですから。 (佐田桂子)