私たち市民社会は、本日公開されたTICAD横浜宣言、行動計画およびTICADフォローアップ・メカニズムの草案を、複雑な気持ちで受け止めました。
この宣言および行動計画案が採択されれば、若干の前進ということができます。新しい草案では、これまでの草案で全く言及されなかったり、軽視されてきたりした各種の事項、例えばミレニアム開発目標、民主化、感染症対策、そして市民社会のTICADプロセスへの参加の重要性といったことが明記されています。また、リプロダクティブ・ヘルスの促進のための「マプート宣言」など、アフリカ諸国がこれまで採択してきた各種のイニシアティブに対する日本政府のコミットメントも記述されています。
しかし、この草案には、まだ不明確、不十分な箇所があり、最終的な成果文書として首脳たちが採択する前に解決される必要があります。
1. マクロ経済での成長が家計レベルでの貧困解消に結びついていないという問題が適切に認識されていません。貧困者への十分な配慮を欠いた現在の経済成長戦略がもたらす負の影響を適切に分析したうえ、その改善のための方策を行動計画に明記すべきです。また、貿易政策を貧困者に十分配慮したものにすることが不可欠です。
2. この観点から、貧困の解消に向けた、アフリカの民間セクターの役割について、宣言の中で強調されるべきです。さらに、日本政府は、民間セクターの活動が日本政府の貧困解消に向けたコミットメントと連携し相乗効果を上げるように、民間セクターとの協働を実行する必要があります。
3. 横浜宣言では市民社会の積極的な参加の必要性が明記されているにも関わらず、行動計画とフォローアップ・メカニズムに関する草案では、ユニセフが行う一事業を除き、明記されていません。フォローアップ・メカニズムの全ての機構及び制度に市民社会の参画を求めます。
4. 行動計画の附表には、英国など他国の政府や、国連機関(ユニセフ、ユネスコ等)、多国間機関からのコミットメントが含まれています。日本政府が、より広い枠組みの中で開発政策について取り組もうとしていることは喜ぶべきことです。しかし、TICADで何が新しく約束されたことと、これまでTICADプロセスの外部で約束されてきたことを区別し、TICADで何を実施するのかを明確にする必要があります。また、日本政府が行った約束のほとんどは、日本政府が普段から実施している援助方法の枠内にとどまっており、アフリカ諸国がMDGsの達成の為に行っている、資金見積もりのなされた適切な政策の実施を支援するものになっていません。
5. 適切なフォローアップを行うため、行動計画と附表で約束された事項を各国で実施するための枠組みが必要です。
6. 宣言では、アフリカ諸国における熟練した人材の育成と雇用の重要性が強調されていますが、こうした人材が都市に集中し、地方ではほとんど存在していないという問題、つまり都市・地方格差にとりくむことの重要性について明記されていません。
7. また、熟練した保健医療従事者の育成について言及されているものの、採用と雇用の継続について触れられていません。採用と雇用の継続がなければ、保険医療従事者の人材流出を防ぐことは出来ず、育成にかけた資金は無駄になってしまいます。
8. HIV/AIDSはアフリカにおける人間の安全保障の最大の脅威ですが、宣言・行動計画草案では、2010年までにエイズ治療・ケア・予防の普遍的アクセスを達成するという、合意された国際目標に対して日本がどう貢献するかについて言及されていません。サハラ以南アフリカは感染が広汎に存在する状況であり、ケアと治療は包括的対策に不可欠です。現在、エイズ治療に関して、目標と現実の間には大きな開きがあり、目標を達成するには緊急の行動が不可欠ですが、その必要性が無視されています。
9. 民主化については、平和構築の観点からのみ言及されています。しかし、最近の南アフリカ共和国での危機的状況は、マクロ経済成長によって自動的に平和や、富の再配分まで含めた民主主義の実現が保障されるわけではありません。日本政府は、平和定着、良き統治および民主化の支援において、貧困の解消と不平等の軽減が重要であることを強調し、これらの政策を統合的に実施する必要があります。
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