はじめに
アフリカ民衆の参加するアフリカ政策
TICAD市民社会フォーラムは日本の対アフリカ政策が「アフリカの人々に一層役立つ」ものとなることを目指します。そのためには、アフリカの民衆が主体となって、アフリカ政策と援助が作られることが理想でしょう。最適な支援を知るための情報は民衆だけが持っており、最適な支援を判断する権利は民衆にあるべきだからです。日本の市民社会は日本の政策と援助についての情報を提供し、かれらの決定を反映させるチャネルを提供しなければなりません。
日本の政策は日本の国民のために作られるべきかもしれません。しかし、わたしたちはこうした考えは日本国民の大多数に共有されるものと確信しています。日本国民がアフリカ政策に求めているのは、日本の経済的利益や安全保障対策ではなく、アフリカの人々への人間的共感だと思うからです。
日本の対アフリカ政策と援助
日本のアフリカ政策は、これまでアフリカ民衆の声基づいてつくられてきませんでした。日本政府の対話の相手はアフリカの政府ではあっても、民衆ではないからです。しかし、政府が民衆の利益を実現する意思と能力を、備えていないことは珍しくありません。特にアフリカでは財政的困難と政治的不安定のためその傾向が高く、政府間の対話だけでは民衆のための政策は歪められる恐れが強いのです。
日本はアフリカへの有力な援助国の一つであり、その政策や援助はアフリカ民衆に大きな影響を与えてきました。他方、アフリカ民衆は日本に影響を及ぼすことが出来ませんでした。TICAD市民社会フォーラムは、この不均衡な関係を打ち壊し、アフリカ民衆から日本の政策への流れを作り出すことを目指します。
よりよいアフリカ政策にむけて:三つの提案
私達は、日本のアフリカ政策にアフリカ民衆の声を響かせるため、三つの提案を構想しています。第一が「アフリカ政策市民白書」で政策の評価と提言を目指します。第二は「援助アラート」(援助の早期警戒ないしは不良援助予防システム)で、援助内容と制度のチェックと改善を目指します。第三は「日本の政策と援助に関するセミナー」で、アフリカNGOに対し、日本の援助へのアクセスを提供するとともに、援助・政策に対する議論の場を提供します。なお、以上三つの提案の名称はすべて仮のものです。
アフリカ政策市民白書
まずアフリカ政策市民白書(以下市民白書とよびます)は日本の対アフリカ政策と援助実践についての定期的評価と改善のための提言を、定期的に世界に向けて発表するものです。具体的な評価対象はアフリカ政策全体、アフリカ援助全体、各国別では二国間の政策、援助政策に加え、代表的なプログラム・プロジェクトも対象とします。
アフリカ人主体の評価
政策や援助に対する評価は既にたくさんあります。それらと比べて、市民白書の特徴は二つあります。第一にアフリカ人主体の評価です。評価はアフリカのNGOや研究者が行います。さらに評価は民衆の参加に基づいて行います。日本側、つまり私達の役割は日本の政策や援助についての情報を提供し、アフリカ全体で利用できるマニュアル作成を支援し、必要な資金を集めるこの三転です。
貧困者・弱者の利益を評価基準に
第二に、評価基準を貧困者・弱者の利益に絞ります。他の基準は考慮しません。排除される主な基準として次の三つをあげることができます。まず「援助目標から見た達成度」。これは通常の評価の基本であり、JICA、JBIC、外務省、総務省の評価でも採用されています。次に「受益国の経済成長への寄与」。これは規模の大きい援助については、通常の評価に組み入れられており、援助の経済評価とよばれる研究の多くはこれにあたります。最後に「日本の国益への影響」があります。国益への効果について評価しているのは、政府の政策評価です。
市民白書はこれらを無視します。理由は私達の使命達成に集中するためです。わたしたちは「貧困者と弱者」の立場に徹底して立つことを目指します。援助の制度や枠組みを前提とし、受益者を限定した「援助の達成度」評価とは立場が異なります。「経済成長」は長期的には貧困削減にも必要かもしれませんが、不平等を拡大し、貧困者や弱者に悪影響を及ぼす側面もあります。市民白書は彼らが成長や発展の犠牲になることを監視します。
市民白書作りに参加を
市民白書は手法的には前例のないチャレンジです。市民白書の提案は、TICAD市民社会フォーラムがシンクタンクを作る提案なのです。援助実務者、研究者、NGO, 学生の英知を結集して、準備には1年間かかるでしょう。そして2年目の終わりに第一号を発表したいと思います。
日本語版だけでなく英語版をつくり、ネットを通じて全世界の人がアクセスできるようにし、信頼できる正確な情報源としての地位を確立することを目指します。日本のアフリカ政策・援助が分りやすく、明快に評価され(星の数であらわすのも良いアイディアだと思います)、メディアにも取り上げられ、関心のあるすべての人々が参照する報告書です。市民白書は日本の政策改善に大きな役割を果たすことが可能になるでしょう。2008年のTICADにおいても、日本の政策や援助への影響について参加者が正確な情報をもって東京に来れば、会議の質は大幅に向上することでしょう。
アフリカ援助アラート
援助の早期警戒予防システム
次に「援助アラート」についてご紹介します。すでに述べたように、これは援助の早期警戒システムないしは不良援助予防システムです。NGOによる援助監視システムはすでにいくつか存在しています。(たとえばAid
Watch, Australia, U.S. Foreign Aid Watch,
USA )他の監視システムと異なり、援助アラートは不良援助の「予防」を主な目的とします。そのためにできるだけ早い段階で問題(あるいは問題がある可能性)を指摘することを重視します。援助は長く複雑な行政プロセスを伴います。正式な協定の署名はもちろん、それ以前でもやり直しはしばしば大きな行政コストを発生させます。そのため「行政的慣性」が生まれる前に警告を発することがとても重要です。疑問が投げかれられた場合、その内容確認に無用な時間をとらず、速やかに関係諸機関に事実の照会を行い、その経緯を内外に公表します。もちろん既存の援助の問題を指摘することも援助アラートはためらいません。
援助アラートの成果は、不定期に発行される「アフリカ援助アラート通信」です。ネット上で発表され、日本とアフリカの政府、メディア、NGO、ドナーや国際機関に送られます。援助アラートは日本とアフリカの政府、援助実施機関にも、援助の失敗を避け、内容の改善のための有益な情報となるものです。援助アラートの経験と情報は、
もちろん市民白書に反映されるべきでしょう。
初期の段階では、既存のプログラムの分析が重要な仕事となるでしょう。日本のアフリカ援助はその三分の一がプログラム援助(KR, KR2, ノンプロ無償など)にあてられ、しかもプログラムの多くは半ば定期的に供与されてきた経緯があるからです。
「援助アラート」システムを作ろう
援助アラートの第一の情報源は、アフリカ現地のNGOや草の根団体であり、そのネットワーク作りをTICAD市民社会フォーラムは支援しなければなりません。また日本国内の仕事も重要です。公開情報をもとに、進行するプロジェクト、プログラムをチェックしなければなりません。
援助アラートはまずネットワーク作りのチームを必要とします。すでにアフリカにフィールドがある人々を中心に、NGOや草の根団体と話し、情報収集の網の目を作らねばなりません。さらに国内に優秀なチームを必要とします。公開情報を追いかけ、ネットワークからの情報を活用し、関係諸機関に事実を確認し、援助アラート通信を発行するチームです。仕事のためにはアフリカの政治・経済・社会と援助の制度・手続きの双方を間場日、精通することが求められるでしょう。
日本の対アフリカ政策と援助についてのセミナー
三番目の提案は日本の対アフリカ政策と援助についてのセミナー(援助セミナーとよびます)です。その目的はアフリカNGOの日本の政策理解と援助アクセスを拡大することです。日本の政策・援助の実体は、アフリカではNGOにはほとんど知られていません。それどころか、商業的利益を目的とするものと誤解されることも少なくありません。日本の援助へのアクセス方法を知っているのもごく限られており、「日本人の友人がいないとアクセスは難しい」と考える団体が多いのです。日本のアフリカ政策と援助に発言するには、まず正確な情報を知ってもらうことが必要です。そのために、アフリカのNGOと日本の援助関係者が情報を交換し、その上で改善に向けた議論をする場として、アフリカ各地で援助セミナーを組織することを提案します。
援助セミナーのイメージ
具体的なイメージをもってもらうために、援助セミナーの議題と報告者の案を示します。
・日本の対アフリカ政策と援助の概要(沿革・制度・実績・特徴):TICAD市民社会フォーラム
・援助への具体的アクセス:外務省・JICA
・これまでの経験:(受益団体・外務省・JICA)
・ 討論と提言
援助セミナーを実現しよう
このセミナーを実現するには、アフリカにフィールドを持つ人たちの協力が必要です。アフリカNGOとのコンタクト、信頼関係が不可欠だからです。それを基礎にセミナーの機会を活用してネットワークの拡大が可能になるでしょう。また外務省・JICAの協力がぜひとも必要です。
このセミナーは、TICAD市民社会フォーラムの力の源であるネットワークを強化するだけでなく、その提言は市民白書の貴重なインプットとなるでしょう。
よりよい政策はより多くの人が関心を持つことから
よりよい政策はより多くの人が関心を持つことから始まります。アフリカで、日本で、世界で、一人でも多くの人が日本の対アフリカ政策・援助に関心を持ち、注目することが必要です。それに必要なのは、良質で信頼できる情報、政策を変えるチャネルの二つであり、TICAD市民社会フォーラムはこの二つを提供することを目指します。
TICAD市民社会フォーラム戦略検討グループ結成の提案
最後に、これまで述べてきた提案を具体化するために、本日の参加者の目名産に、TICAD市民社会フォーラム戦略検討グループの結成を提案します。具体的な仕事は、三つの提案(市民白書、援助アラート、援助セミナー)の実現可能性の検討、手順の策定、7月以降アフリカに向かう人、あるいは現地に滞在している人に、滞在中にNGOと協議してもらえるよう、協議事項を定めた上でお願いする。そして三つの提案を実現するための、各チームのTORをつくり、人選を行うことです。皆様の参加をお願いします。
TICAD市民社会フォーラムには、他にも広報やアドボカシーの仕事があります。今日はこれらに触れることが出来ませんでしたが、いずれもTICAD市民社会フォーラムの活動の柱です。これらの活動への参加も同時に呼びかけたいと思います。
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