2003年9月22日
各 位
ACT2003(TICAD IIIのための市民行動)
代表世話人 小峯 茂嗣
拝啓 時下ますますご清祥のことと、お慶び申し上げます。
9月29日から10月1日まで、日本政府、UNDP(国連開発計画)、OSAA(国連アフリカ特別調整室)、GCA(アフリカのためのグローバル連合)、世界銀行の共催で、アフリカの開発をテーマとした国際会議「第3回東京アフリカ開発会議(The Third Tokyo International Conference on African Development(TICAD III)が開催されます。日本政府は「アフリカ問題の解決なくして21世紀の世界の安定なし(ヨハネスブルグサミットでの小泉首相の発言)」という姿勢でこの会議に臨んでいます。しかし1993年の第一回開催から10年の歴史を持つTICADは、その意義、市民社会の参加、具体的な成果といった点について、多くの課題が指摘されています。
「ACT2003(TICAD IIIのための市民行動)」では、8月3日に外務省の協力を得て、9名のアフリカNGOゲストを招聘し、公開シンポジウムを開催し、アフリカ開発における様々な課題(過去のTICADレビュー、NEPAD、債務問題、感染症、食料・農村開発、紛争予防など)について検討し、以下の提言書を作成し、TICAD III共催者には9月8日付けで提出しました。本会合において行われる「市民社会との対話」のセッションでは、さらに参加するアフリカ国家元首、閣僚、国際機関の担当者に提言書を提出する予定です。
つきましては、この提言書の賛同を広くアフリカに関わる団体・個人の皆さまに募り、より大きな草の根からの市民の声として、全てのTICAD III参加者に届けたいと思います。ご協力、よろしくお願い申し上げます。
敬具
TICAD IIIおよびACT2003については
ACT2003のウェブサイト(http://act2003.org)をご覧ください。
第三回アフリカ開発会議(TICAD III)に向けた市民提言への団体・個人賛同のお願い
呼びかけ団体:ACT2003(TICAD IIIのための市民行動)
締め切り:9月27日(土)までにFAX(03-3834-6903 )又は、メール(act2003@khaki.plala.or.jp)宛てにお申し込みください。TICAD本会議に提出する提言書の巻末に、賛同される個人・団体名が記載されます。
【個人賛同】
お名前:(和文) (英文)
所属先:(和文) (英文)
肩書き:(和文) (英文)
連絡先:TEL E-mail
【団体賛同】
団体名:(和文) (英文)
連絡先:TEL E-mail
ACT2003事務局
110-0015東京都台東区東上野1-20-6丸幸ビル5F
Tel03-3831-2772 Fax03-3834-6903
act2003@khaki.plala.or.jp http://act2003.org
【TICADIIIへの市民提言(サマリー)】
1.紛争予防・平和構築
アフリカで激増する内戦に巻き込まれる一般市民が、平和を享受できるようになることは、最重要事項である。紛争によって受けた人的・物的損害の復旧、武装解除、小型武器の回収などは、早急に対処すべき事項である。しかしながらより重要なのは、崩壊した秩序を立て直し、紛争の発生・再発を防ぐ社会の再建である。政治、経済、社会を構築するために、除隊兵士・難民の社会復帰、民事的/刑事的正義の回復、民主化、和解促進などに、より多くの力が注がれるべきである。
2.農村開発
アフリカにおいて、貧困人口の大多数は、農村に居住している。農民たちが慢性的食料不足から解放され、環境を破壊することなく所得を向上させ、安定した生活と、村、個人レベルに於ける食料安全保障への課題を克服することが、第1に重要である。しかし、農林畜水産物の生産拡大だけを目指すのではなく、保健、環境、水、ジェンダーを含む横断的観点からの持続的農業開発でなければならない。
また、農業は多様であり、農民の選択肢に応じた農業開発の研究、普及、土づくり、水管理、農業協同組合、農産物の加工、販売に、地方政府、NGOの協力が重要である。各地域の5つの資本(自然、社会、人間、物的、金融)に基づいた長期農業開発調査の着手を提案する。
3.HIV/AIDS・感染症
TICAD IIの行動計画は、アフリカの人々が定める優先課題の追求こそがオーナーシップの源泉であると述べている。エイズ対策でも、当事者たる患者・感染者のオーナーシップは重要であり、「AIDS患者・HIV感染者の参加の拡大」(GIPA: Greater Involvement of People living with HIV/AIDS)を追求すべきである。予防啓発と自発的カウンセリング・検査(VCT)だけでなく、ケア・サポート・治療を含めた包括的なアプローチが必要である。治療に関しては、抗レトロウイルス薬を含む必須医薬品へのアクセスを妨げるあらゆる障壁が除去されるべきである。エイズ・結核・マラリア対策の資金供給の要は世界エイズ・結核・マラリア対策基金(GFATM)であり、TICADはGFATMの支援・強化に最大限の協力をすべきである。
4.教育
アフリカの教育は危機の状態にある。4割の子どもは小学校に通っておらず、債務返済、構造調整等の影響により1990年代に17カ国で就学率が低下した。ザンビアではHIV/AIDSによって一年に死亡する教員の数が、新規に採用される教員よりも多い状態である。TICAD IIIは、第1にアフリカ諸国の政府が初等教育や成人識字やライフスキル教育といった基礎教育を重視し、特に学費や隠れたコストを廃止するために努力することを、第2に援助国・機関は、基礎教育の普及のための強い意志をもつアフリカ諸国政府に対して財政的な支援を増大することを、第3に基礎教育援助拡大のメカニズムであるファストトラックイニシアチブの対象国に対して、ドナー機関はすぐに必要な不足額を供与することを呼びかけるべきである。
5.債務と開発目標
第1に、債務問題を解決しようとする際、債権者と債務者の不均衡な力関係を正すための地球規模のガバナンスの枠組みを確立していく必要がある。
第2に、債務帳消しによって使用可能となった資金は、社会開発、とりわけ貧困根絶に確実に用いられるべきであり、そのために、公平で透明性のある債務仲裁プロセス(FTAP:債権・債務両国政府と双方の市民が参加)の確立が必要である。
第3に、債権者であるIMF・世銀主導のHIPCsイニシャティブを廃止すること、及び債務削減・帳消しとPRSP(貧困削減戦略ペーパー)プロセスを切り離すことを求める。
第4に、MDG(国連開発ミレニアム目標)を達成するには、債務帳消しだけでは不十分であり、従って、ODA(無償)の拡大、新資金源(為替取引税)の導入などを検討すべきである。
6.TICADスピリッツ・プロジェクト
TICADの根幹であると言われているTICAD精神は、具体的なプロジェクトにどのように体現されているのか?その評価とはどのようにおこなうべきか?等の方法や指標については、これまでにまったく提示されてきておらず、そのため、TICADの議論がどう現実のアフリカ開発協力の場で活かされているのか不明な状態である。共催者には、TICADスピリットを示す具体的なモデル事業の指名を希望したい。その上で、第三者(NGO含む)n参加も含めたモニタリングと評価チームを結成し、今後のアフリカ開発の参考とするべきと考える。
また、もし、共催者の側で具体的なモデル事業の指名が困難であるなら、同プロジェクトをアフリカおよび他地域の全政府、NGOおよび国際機関から募集することを提案したい。選ばれたプロジェクトには、少なくとも5年間の予算を提供し、モニタリングと評価を続け、今後のアフリカ開発の参考となるものとする。
以上
【以下は全文の和訳です。】
アフリカと日本の市民の社会は、2003年8月3日に東京にて、TICAD IIIに向けたシンポジウムを行い、TICADが掲げる哲学および市民参加のプロセスについて検証し、以下の提言を作成した。
アフリカに栄光あれ!!
アフリカと日本の市民社会は、アフリカの開発の優先課題には、アフリカの人々自身による効果的なオーナーシップが必要であると求める。
民主的で、参加的で、地域社会に根付いた開発を求める声は、TICAD IIIのプロセスが、日本やアフリカの市民社会組織の活性化に寄与することを求めている。
TICADの10年ものプロセスを経て、オーナーシップの概念に対する理解は、捉えどころがないままであり、真剣に議論をする必要がある。TICADが謳うNEPADおよびアフリカ開発一般への貢献とは、多岐にわたる分野での意思決定プロセスへ、より市民社会の参加を広げ、深めることを促進するものであるべきである。さらに重要な点は、TICADのプロセスが、NEPADの実施にあたって、アフリカの大多数の人々にとって公正で持続的な開発を保証することを確認する機会となるべきである、ということである。
TICAD IIIで議論される9つの優先課題はアフリカの開発にとって重要な問題である。しかし、社会開発プログラムの実施の障壁となっている債務問題は、地域の開発にとってもっとも重要な問題のひとつである。さらに、TICAD IIIが掲げる二つの重要なアプローチ(アフリカ域内協力と、アジアアフリカ協力)についても、そのプロセスに市民社会の十全なる参加があるか否かが、TICADプロセスの成否の鍵となる最重要課題である。
TICADプロセスは、過去10年間に何を成したか、また遭遇した困難や障壁について、真摯なる評価をするべきである。その評価は、TICAD共催者だけでなく市民社会によっても実行されるべきであり、それが今後の評価のための新しい仕組みとなる。パートナーシップは、容易に構築できるものではなく、オーナシップは、それが草の根の地域社会に生きる人々から発せられたとき、はじめて確かなものとなる。開発とは、人々そのものであり、会議や国家のことではない。全てのTICAD III参加者は、全ての地域に生きる人々と共にあるべきだ。TICAD IIIのプロセスの成功は、第一にアフリカの政府と人々の熱意にあり、次に日本をはじめとするその他の国の人々の支持が得られるかにかかっている。
市民社会はTICADのプロセスを、政府との連携を強化する機会とすべきであるが、最も重要なことは、アフリカの人々の声が、確かに届くようにすることである。
アフリカに栄光あれ!
1:債務帳消しと「公正で透明性のある仲裁メカニズム」に関する提言
今日世界のほとんどの国々が直面している債務問題と、他の開発プロセスとを切り離して考えるべきではない。債務そのもの、そして重い債務返済義務が、多くの国々の発展に、特に教育や保健といった基礎的な社会サービスに、明らかにマイナスの影響をもたらしてきたことは、それぞれ異なる利害をもつ関係者の間でも一般的に認められていることである。債務は開発を持続不可能なものに変え、人々の命の犠牲なしに返済することはできない。従って、債務問題をTICAD IIIのアジェンダに再び取り上げ、しかるべき議論が行われることを強く主張する。
開発の受益者が自らの問題として取り組まない限り、開発は持続可能なものとはなりえない。従って、アフリカの開発は、アフリカの人々自身の手によって作り出されなければならない。人びとによる取り組みが成果を生み出すためには、国際社会はアフリカのイニシアチブに敬意を持って、対等の立場として支援をすべきである。
効果的な貧困削減政策の実施のために、経済的、社会的、そして環境的に健全な条件を整え、国内の政策を実施することは、全ての国がもつ最も重要な責任である。誤った国内の運営、膨れ上がって非効率な行政制度、公然の政治腐敗、そして一般的には司法の欠如などが、アフリカの内部からの開発が失望的なものでありつづけ、政府開発援助が期待された成果をあげてこれなかった理由である。アフリカの各国政府は、ガバナンスのプロセスを通じ、真の市民社会組織との定期的な協議を確立・改善していくメカニズムをつくるべきである。また、開かれた、透明性のある、説明責任を有する政府にするメカニズムを確立する必要がある。
提言:
1)力関係の改善を
アフリカやその他途上国において不正に積み重なってきた債務の問題を解決する際、債権者と債務者の不均衡な力関係の改善に取り組む必要がある。TICAD IIIプロセスはその取り組みの基礎となるべきである。債権者が債務者を支配する道具として債務を使用することを止めなければならない。また、債務者側が発展に必要な資本の蓄積を借金でまかなうことを止めなければならない。「公正で透明性のある仲裁メカニズム」のような地球規模のガバナンスのシステムが必要である。債務危機を解決する際に、弱い立場にある債務者が(力の不均衡を)是正することができるメカニズムが必要なのである。このメカニズムは、国連システムの下に置かれることが望ましい。国連は、議定書や協定の制定などの実績をもつ地球規模のガバナンス組織である。議定書や協定の制定によって、国家間の紛争を、交渉、仲裁、調査、調停やその他平和的手段で解決することができる。従って、債務の仲裁メカニズムを国連の下に確立する可能性を探るべきである。
また、TICADプロセスは以下のことを検討すべきである:
2)開発資金として
債務帳消しは、開発に必要な資金を生み出す重要な資金源の一つとみなされるべきである。即時の、全面的な債務の帳消しが必要である。さらに、アフリカや他の重債務国向けの(贈与でかつひも付きでない)政府開発援助(ODA)を増額すべきである。ODA増額に際しては、開発プロセスを損うような条件をより少なくすべきである。
3)社会開発、特に貧困根絶に向けて
債務帳消しによって浮いた資金が、教育や医療など基本的な社会サービスに用いられるための枠組みを作る必要がある。債務帳消しキャンペーン・ジュビリー2000が提案した「公正で透明性のある仲裁プロセス(FTAP)」は包括的な枠組みである。この枠組みは、債権国政府、債務国政府及び双方の市民が参加する第三者的な仲裁プロセスである。このプロセスにおいて、不正に積み重なった債務が明らかにされ、独裁者によってかすめとられた富(結果として債務となって残っているもの)が返還されるべきである。
2:HIV/AID・感染症対策に関する提言
東京で1998年に採択された第2回東京アフリカ開発会議(TICAD II)の「東京行動計画」(Tokyo Agenda for Action)は、次ように述べている。「アフリカが自ら定めた開発の優先順位が追求されるときにこそ、オーナーシップが発揮されるのである」。私たち、アフリカと日本でHIV/AIDSに関して取り組む市民社会、およびPATAM(全アフリカ治療アクセス運動)を含むHIV感染者・AIDS患者は、この記述に鑑み、以下、提言する。
1)統合的なアプローチの必要性
TICADの実施においては、HIVの予防および、自発的かつ秘密の守られたカウンセリング・検査(VCCT:voluntary and confidential counseling and testing) を、ケア・サポート、そして治療を伴って行うこと、また、これらを包括的・継続的に行うことの重要性が認識されるべきである。ここには、日和見感染の管理、抗レトロウイルス薬の供給が含まれていなければならず、また、必須医薬品のアクセスに対するあらゆる障壁は取り除かれなければならない。TICADプロセスでは、南南協力による製薬技術の移転を支援するべきである。また、上記の統合的なアプローチは、治療教育および治療リテラシーのプログラムの形成および実践と並行して進められるべきである。
2)HIV感染者・AIDS患者の参加拡大
アフリカ、およびその開発パートナーが継続的に支援するHIV/AIDSプログラムは、HIV感染者・AIDS患者の広範な、また有意義な参加の必要性を明記した国連エイズ特別総会の宣言に基づき、GIPA(患者・感染者の参加拡大)にのっとって遂行されるべきである。
3)貧困で脆弱なコミュニティの社会的・経済的なニーズ
TICADプロセスにおいては、HIV/AIDSの影響による負荷をより多く背負っている貧困で脆弱なコミュニティの社会的・経済的なニーズ、不足、要求を認識し、そこに働きかけていくことが必要である。
4)世界エイズ・結核・マラリア対策基金
「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」(GFATM)は、個別の開発パートナーが単独で直接に接触することが困難な、広範で多様な人々の集団に対して働きかけることが可能である。日本政府および他の開発パートナーは、この基金を支援し、強化するという自らの誓約を守らなければならない。
3:ACT農村開発分科会提言文書
アフリカにおいて、貧困人口の大多数は、農村地域に居住している。彼ら・彼女らが慢性的な食料不足から解放され、環境を破壊することなく、所得を向上させ、安全かつ安定した生活が営まれること、すなわち、村・個人レベルにおける食料安全保障への課題を克服することがまず第一に重要である。一見安定したように見える農村社会の脆弱性こそが問題である。突発的な飢餓を生じさせないようなローカルレベルにおける平時の課題として、食料安全保障を捉えるとともに、なるべく早い時期に、食料自立の目標を達成する必要がある。そのためには、以下の2点が考慮されなければならない。
1)農村開発の観点
農村開発は、食料生産だけではない。単なる農林畜水産物の生産拡大を目指すのではなく、保健・環境・水・教育・ジェンダーを含んだ横断的な観点から捉える必要がある。また、貧富格差の拡大が、紛争の背景にあることにも留意すべきである。
2)各地域の多様性に合わせた開発の観点
アフリカの農業は多様であり、その多様性に即した(土壌や降水量の違い、歴史的につくられたファーミング・システムの特徴を土台にすえた)開発の観点が必要である。
以下は開発パートナーに対する提言である。
1)各地域のニーズに対応した農業開発への支援:長期農村開発調査の実施
アフリカ各地域における農民の状況を、各国、各地域の政府および当事者(農民)がしっかり把握する必要がある。各地域の5つの資本(自然、社会、人間、物的、金融)にもとづいた長期農村開発調査においては、地域農民の選択する主作物と種子の入手、土づくりと有機・無機肥料の最適組み合わせ、水管理を含む農民組織、農業協同組合、農産物の加工・販売などを視野に入れ、農民生活の豊さを主目標とする。この調査に対し、開発パートナーは支援を行うべきである。
2)各地域のニーズに対応した農業開発への支援:農業普及活動の強化
アフリカ農業の多様性に即した農業普及活動が求められている。民営化の進む中、多国籍企業による「普及活動」は、しばしば現地の状況に合っていないことも多い。政府および現地NGOによる農業普及活動が進められ、当事者である農民自身の選択肢を増やさなければならない。開発パートナーは、そのための支援を行うべきである。
3)有機農業も含めた土壌管理への長期的な支援
農業において、土づくりは基本である。アフリカの多くの農村社会において、低投入かつ低コストの有機農業は、食料生産の多様性と安定化の面から、より積極的に活用されなければならない。開発パートナーは、そのための支援を行うべきである。
4)アフリカに適した改良品種開発研究と普及への全般的な支援
アフリカの食料安全保障を確保するには、アフリカに適した作物の品種開発およびその可能性の見える国や地域での普及を進めなければならない。しかしながら、遺伝子組み換え作物は危険であり、環境に対し、深刻な影響を与える。開発パートナーは、持続可能な農業にこそ、継続的な支援を行うべきである。ネリカ米についても同様である。
5)食料援助
緊急時の食料援助は必要である。しかしながら、平時の食料援助は、国内市場の食料価格を下げるなど、弊害も多い。現地の食料生産者である農民の生活を不安定化させぬよう、各国政府、および開発パートナーは、食料援助実施の可否を考慮する必要がある。
6)長期的マクロ視点からの協力
2015年までに、飢餓と貧困人口の割合を半減するという「ミレニアム開発目標達成には、膨大な資金と人材が必要である。先進国例としても、最近加速中の「南北協力モーメンタム」を拡大し、NEPADで提示されたアフリカ側のオーナーシップに対応した資金協力、民間投資、貿易促進の支援を行うべきである。
4:紛争予防・平和構築に関する提言
武力紛争が引き起こす甚大な人的・物的被害は、早急に回復されなければならない。しかしながらそれのみでは、紛争前の状態への単なる回帰にすぎない。武力紛争の根本原因である社会構造に踏み込んでこそ、紛争後の平和構築と紛争の予防となりえるのである。
(1) 武力紛争に起因する人的、物的被害の回復という視点と、(2) 武力紛争を予防し、または一度停止した武力紛争を再発させない、政治、経済、社会システムの(再)構築という二つの視点から、紛争の予防と平和の構築について提言する。
1) 武力紛争に起因する人的、物的被害の回復
1)-1難民、国内避難民への人道支援
難民、国内避難民に対する人道援助は、中立的でなければならない。ここでの中立とは、難民、国内避難民全体の中における特定の集団のみに利する目的で行われるものでなく、またしたがってその対象を政治的な理由等で狭めるものでないことを意味する。
1)-2 難民、国内避難民の帰還促進
難民、国内避難民の帰還に関する諸問題には、帰還先の不安定な治安状態と破壊されたインフラなどが大きな影響を及ぼしている。彼らの帰還を進める上では、紛争の再発や難民の再発生を防止する取組みを視野に入れた対策が必要である。TICADプロセスは、国際社会による支援が帰還先における社会的、経済的、平和的な環境整備に向けられるよう強調すべきである。
1)-3 武装解除・動員解除
軍事オペレーションと認識される傾向が強いが、より政治的、社会的、長期的な文脈で取り組まれるべきである。和平合意時における紛争当事者間の信頼醸成努力が何よりも不可欠であり、TICADプロセスは、同オペレーションは地域社会やCSOとの中立性を保った協力を得て行われるべきであることを強調すべきである。
1)-4 小型武器の回収
停戦調停のプロセスの一環としての国連等の第三者機関による武装解除の徹底が望まれる。(回収の量に重点)
中期的武器回収は当事国の、紛争当事者でなかった中立的立場の団体が主導に立ち、地域レベルで対話・和解・ 市民教育を推奨し、武器の放棄と平和構築へ導くことが大切である。(回収の質に重点)
1)-5 破壊された住宅、公共施設
緊急支援は即時無償。地域社会が決定権と独自性を確保。民主的決定方法を取る義務があり、貧困削減、社会的公正、経済発展、人権、教育、福祉および伝統文化への配慮が必要である。
2) 武力紛争を予防し、または一度停止した武力紛争を再発させない、政治、経済、社会システムの(再)構築
2)-1 司法制度再建、樹立(民事/刑事的正義の回復)、治安回復(警察組織再編)
紛争を直接的な暴力から解放し、法の秩序に照らして解決する制度を定着する必要がある。金銭による解決を求める民事的法体系と刑罰を求める刑事的法体系を明確に区別することによって、市民の自由な権利を拡大し、保全する。また、法的に確立した裁判所による二審以上の裁判制度の構築が必要である。2)-2 行政部門の再建および民主化
紛争後の政府による客観的採用基準と客観的給与基準の策定は欠くことのできない条件である。国際社会および国内/国際NGOは地域の自立性の尊重、中央政府と地方政府の役割分担の明確化、地方政府の財源確保、公正選挙と社会的弱者への配慮を必要とする。
2)-3 小型武器・稀少天然資源の「不正」取引規制
a)小型武器
「国連小型武器不正取引防止のための行動計画」の遂行の徹底は不可欠であるが、依然十分ではない。行動計画において、モニタリングと推進に重要な役割を果たすCSOが、全プロセスに正式に参加することが保障されるよう強く求めたい。既に、CSOの排除が顕著になっている地域も見受けられるが、これに懸念を表明したい。
「不正」取引だけでなく、政府による武器輸出入・軍縮・治安関連機構改革についても中心議題とされなければならない。需要側を規制するだけでなく、供給国における(合法も含めた)武器輸出の規制、軍縮促進・軍事産業の転換が必要である。
b)稀少天然資源
ダイヤモンドに限らず、他の資源(木材・石油・鉱石)についても同様の合意と規制を早急に行う必要がある。国家間の取引についても規制の対象とするべきである。
国家による資源開発・管理の独占が対立や格差を暴力化させ、紛争を長引かせたりすることがないよう、国民の生活向上を優先して利用されなければならない。これを実現するため、NEPADやTICADで謳われている「グッド・ガバナンス」、「コーポレート・ガバナンス」、「民主主義の定着」の真の意味での実現が不可欠であり、その具現化への道のりが話し合われなければならない。
2)-4 民間軍事会社
お金で容易に買える軍事力(傭兵だけでなく民間軍事会社)は、対立が暴力化する傾向にあるアフリカ地域では禁止するべきだ。民間軍事会社や傭兵の存在は、社会における平和文化の定着を疎外するだけでなく、安易な武装化・軍拡につながりかねない。また、国家や武装勢力による勢力圏内における資源の独占を増長しかねない。対話・格差の縮小・国民和解等の努力にこそ、資金や資源は利用されるべきである。
2)-5 国民和解、社会の調和化、修復的司法
内戦後の新政府が過去の暴力行為を処理する制度化する上で、開発パートナーは、現地のイニシアティブによる制度設計を尊重すべきである。開発パートナー、国際NGOは、制度運営上のロジスティックを支え、国内外のNGOは、制度が適切に運営されているかどうかについて、注視していく必要がある。
開発パートナー、国際NGOは、社会開発の枠組みの中で、和解効果を配慮したプロジェクトを重視するべきである。開発機関、NGOは、和解効果を評価項目として組み込んだ事業設計を行っていくべきである。
2)-6 教育、文化活動を通じた平和文化醸成
直接的な紛争予防のために、元紛争当事国に対し、その紛争や政治暴力の経験者・関係者に対する脱暴力紛争的トレーニングを、国家とNGO/NPOとの協働のもとに行う。また、国際的な平和構築・紛争予防に貢献できる市民の人材育成を、NGO/NPOのイニシアティブのもとで行えるような制度の構築が必要である。地域社会及び国際社会における平和文化と民主主義の定着に必要な市民のエンパワメントを促進するため、国家および自治体は、教育機関における「総合的学習」等のカリキュラムの導入を推進する。また、NGO/NPOの手による平和教育推進のための活動を支援し、継続的な紛争予防につながる持続可能な社会づくりへの市民の参画を保障すべきである。
2)-7 難民、国内避難民、帰還民、除隊兵士の経済的自立と社会への再統合
紛争後の紛争当事者間の権力バランスに大きな影響を与える政策は、原則的に控えるべきである。ミクロ経済的な自立した経済単位の増産は、国民経済のマクロ的効果を高めるとともに、政治・経済・社会の長期的安定性を格段に高める。このため自立した農林水産業単位、中小企業者、地域共同体の育成は最も重要な政策の一つとして認識するべきである。
「経済的自立」や「社会への統合」という美名の下に、国家、或いは、強権的な地域社会が、個人、団体、集団を強制的に社会に同化・統合させたり、排斥することを絶対に許してはならない。このような行為が行われた場合、国際社会は即時に抗議し支援の即時凍結、支援金の返還などを民主化義務違反として強く求める必要がある。また地域間・民族間の信頼の醸成を促進する支援が重要である。固有の文化等を尊重する必要がある。
5:教育に関する提言
1)教育の権利
TICADプロセスは、ダカール会議で合意された成年の識字率、教育の質、初等教育といった目標を確たるものにすべきである。これらは貧困、不平等と戦うための武器であり、普遍的な初等教育の目標達成のために必要である。
2)基礎教育のための資源
アフリカ政府は基礎教育のための資源を強化し、貧しい児童の教育にかかる費用および隠されたコストの負担を取り除くか軽減するために取り組み、2015年までに基礎教育の完全普及を達成すべきである。
3)政府によるFast Track戦略への支援
二国間および多国間開発機関はアフリカ各国の基礎教育普及のための支援を、強固な政策と資金供与を持って取り組むべきである。それらの支援は、基礎教育完全普及に関わるセクター、ファストトラック戦略実施にとって必要とされる分野、継続コストなど新たな要素の費用、そして政府による既存のファストトラック戦略を支援するプロジェクトを適正にするために向けられるべきである。
4)FTIの拡大と、障害の除去
TICADプロセスはEFA(万人のための教育)の6つ全ての目標を実現するためにFTI(ファストトラックイニシアチブ)を拡大し、より多くの国に広めるべきである。そのためには既存の資格基準を、より柔軟なものとし、選定プロセスを透明にしなければならない。特にPRSP(貧困削減戦略文書)が、教育開発について困難をもつ多くの国にとってFTI拡大の障害となっていることを改善すべきである。
6:将来の評価のためのTICAD精神を体現するプロジェクトに関する提言
10年前の1993年のTICADで採択された『東京宣言』には、「我々、TICADの参加者は、効果的政策及び行動を通じ、この宣言の精神を前進させる目的を持った方策を各々の責任の範囲内で実施することを誓約する。」と謳われている。「TICAD10周年宣言」を出すTICAD共催者は、この誓約を鑑み、TICADの精神を体現するプロジェクトとは何かを明らかにし、アフリカ各国政府および市民社会をモニタリングと評価のプロセスを公開すべきである。TICAD IIIでは以下の要素について検討されるべきである。
(TICADの精神を体現するプロジェクトの定義)
資格:適切な開発計画を選定するために、全てのアフリカ各国政府およびNGO、さらにアフリカ以外の国の政府およびNGO、国際機関からプロジェクトを募るべきである。
選定基準:どのプロジェクトがTICADの精神を明確に体現しているか、議論を通して決定する。
(選考委員会)
日本だけでなくアフリカ側からも、そして政府機関だけでなくNGOからも募る。
(予算)
選ばれた事業は、TICADスピリット事業として、少なくとも5年は予算を確保(今後のアフリカ向けの二カ国ODA、国際機関向け拠出金、そしてNGO向け予算等、既存の予算枠の中で予算を拠出)する。
(モニタリングおよび評価)
選考時と同様、広く関係者から委員を募集し、全プロセスを公開してモニタリング・レビュー・評価等を行う。
TICADプロセスは、多くのTICADの精神を体現するプロジェクトを評価するメカニズムを設立する時期に来ている。過去三度のTICAD会合に関する議論が、そうしてはじめてアフリカ開発の現場に寄与することができる。
(まとめ)
TICAD IIIはNEPADを支持している。TICAD IIIは、より多くの多様な提言に耳を傾け、プロセスを透明で参加的にすべきである。結果としてNEPADを、全ての草の根に生き、社会正義と幸福のために闘う人々にとって意義ある「アフリカ統一」に真に役立つものすることがTICAD IIIに要求されているのである。
以上